◆DNA◇-kyou


今日私は、今まで胸に秘めていた計画を実行する事にする。


その計画は 「サンタクロース、誘拐計画」

クリスマスには必ず現れる、あの髭じいさん、その名もサンタクロース。

「良い子のところにプレゼントを持ってくる」という噂を小さい頃に聞いた。
その日から、何をするにしても誰かに見られている気がしてたまらなかった。


たとえば、車が全然来ないのに赤信号。
信号無視をしてしまいたいところだが、誰かに見られている私は決してできない。
信号無視なんて、悪い子がすることだもの。

私は良い子になろうとした。
良い子の演技をした。

ずっと、ずっと見つめられているから、ううん、見張られているから。

そう、サンタクロースに。


そしてクリスマスの朝、誰にも言ってなかったのに、私の一番欲しかったものが部屋の片隅に置いてあった。
嬉しい感情よりも「なぜ?」という不安な感情が支配した。

やっぱり、どこかで見張られているんだ。
でも、いったいどこで??
サンタはどこで私を見張っているのか。
学校に行く道、教室、家、部屋の中・・・。
そして何年も悩ませれることになる。

ついに私は、サンタに手紙を書くことにした。

「拝啓 サンタクロース様
 私はいつも良い子でいます。なのでもう私の後をつけないでください」

手紙をポストに投函して2日後、サンタから返事が来た。

「こんにちは。あなたが良い子なのは良く知っています。だってずっと見てきたから。
 これからも、良い子のあなたをずっと見ています。大好きだから」

◆DNA◇-ga-nn

『ストーカー・サンタクロース』
もう疑いのない事実だ。




そして今日、実行する。


まずは、サンタを見つけて、捕まえなくてはいけない。
あんなに見張られているのに、実際に彼にあった事がないのは一番の難点だ。

サンタクロースがどんな顔をして、どこに現れるのか。
どうやって、見張っているのか。

自分の部屋の明かりを見つめながら、ジッと待つことにした。



まだサンタは現れない。


今日はクリスマス・イブ。
きっと姿を見られるとしたら今日。

なぜか変な確信があった。

雪が降ってきた。
ホワイトクリスマス。
まだサンタは現れない。



「富田さん?」
振り向くとそこには、彼。

彼とは、私がサンタクロースに手紙を書いた頃からの付き合いで今年で2年目になる。

「なにしてるの?こんなところで」
「えっと・・・。」
「もしかして、待っててくれた?寒いでしょ、部屋に入ろう」
「・・・うん」
「でもなんで、僕が今日来るってわかったの?」


まさか、有名なサンタクロースを捕まえようとしてたなんて言えず、曖昧に微笑む。
そして彼と一緒に、温かい我が家へと帰っていった。




メリー・クリスマス


お願いサンタさん、もうプレゼントはいりません。

◆DNA◇-ne