「俺だけ見て。俺のことだけ考えて。
アナタの頭の中を俺でいっぱいにして」
口唇に熱を移しては、別のところにも熱を落としていく。
その合間に翔くんが苦しげにささやく。
まるで叶えられない望みを神様に願う人のように。
あまりにも悲壮に感じる口調。
体は熱く昂ぶるのに。
心のどこかでひやっとしたものを感じる。
翔くんがこんなことを望むなんて。
僕はいつだって翔くんでいっぱいなのに。
僕はいつかどこかで翔くんのことをないがしろにしてしまったのかな?
「ごめんね・・・翔くん」
翔くんの動きが止まる。
「できない?」
迷子になった子供みたいな声。
「ちがう。あのね。
僕はいつだって翔くんでいっぱいだよ?
いまさらプレゼントで欲しがらなくても」
「でも・・・アナタの中には釣りもある、キャンプもある。
一緒に毎日散歩してくれる相方もいる。
アナタの生み出す作品だってある。
その全部、アナタの中の一部にいるんだよ。
それがなくなってしまったら、大野智じゃなくなるのかもしれない。
アナタを形成するものの一部だって、分かってる。
でも・・・全部・・・まっさらなアナタが欲しい」
「できないよ・・・・
そんなの・・・できない」
翔くんが困り顔になる。
「今の僕はね・・・・25年前に翔くんと出会って。
一つ一つを積み上げてできた僕。
翔くんと一緒に積み上げてきたんだよ?
まっさらな僕はきっと翔くんのことを好きになる前の僕になっちゃう」
だからね。
今の僕のまま。
積み上げてきた分、翔くんへの想いが大きくなって。
破裂したこともあるくらい。
そんな僕のまま。
「翔くんが僕の中をいっぱいにしてくれるとき。
僕は翔くんの存在しか感じてないよ。
宇宙に翔くんしかいないみたいに感じてる。
僕がね・・・イク時って・・・そんな感じ」
恥ずかしいこと口走っちゃったな、って思った。
でも・・・翔くんの表情が柔らかくなった。
伝えてよかった・・・かな。
「じゃあ・・・イカせ続けたら・・・
ずっと俺しかいないことになるんだね?」
え・・・と。
そういうことになるんだけど・・・
僕・・・もう眠いな。
なんて言えるわけもなくて。
まだ裸のままだったのが幸いとばかり。
翔くんが僕の胸をペロリと舐めて・・・