自分の家なのに、寒々しい。
そりゃそうか。
翔くんのとこにずっと居候してたから。
ここは物置みたいになってたもんね。
留守にしてたから、なんか部屋がよそよそしいっていうか。
やっぱ住んでないと自分んちって感じがしなくなるもんなんだな。
もう少しちゃんと住まなきゃダメかな・・・
少し部屋に手をかけたら、このよそよそしさがなくなるかな?
簡単な掃除と片付けをし始めた。
キッチンの棚の中に松潤がCMをしてた商品が置いてあった。
あぁ・・・そういえば、ちょっと前にみんなで集まった時にもらったっけ。
なかなか食べる機会がなくて、そのままになってた。
これがあれば・・・もしかしたら・・・作れちゃう??
僕はスマホで検索をした。
ちょっとコンビニで買い物したらなんとかなるかな?
男の僕がバレンタインの時期にチョコを買うのは抵抗あったから。
なんとなくあげないって意地張っちゃったけど。
買ったものじゃなければいいかな、って。
なんとなく思った。
コンビニから帰った僕はストレス発散とばかりに刻み始めた。
細かく細かく。
とにかく細かく刻んで。
コンビニで買ってきた生クリームに刻んだものを入れた。
これを電子レンジで何回かあっためてかき混ぜて。
これを冷やして固めればいいだけ・・・らしい。
平たい容れ物が・・・・・たしか小さめのバットがあったはず。
棚の奥の方に入っているのを引っ張りだして。
ラップを敷いて流し込んだ。
冷蔵庫に入れて・・・これであとは待つだけ。
ラッピングも・・・買うのはなんかやっぱり抵抗がある。
それなら・・と。
白い紙に青い絵の具で紙いっぱいに一言だけのメッセージを書く。
ぱっと見わからないようにいろんな色で模様を付け加える。
翔くんにメッセージが伝わんなくてもいい、って思いながら。
僕が思ってればいいから。
バレンタイン当日。
翔くんはニュース番組の仕事。
昼過ぎには局に入って、帰宅は夜中。
きっとスタッフさんから、たくさんのチョコをもらって帰ってくるんだろう。
こんな仕事してると、毎年のようにたくさんのチョコをいただく。
それは分かってるけど・・・・僕もちょっと前までは同じだったけど。
なんか・・見たくない・・・な。
翔くんがたくさんのチョコ抱えて帰ってくる姿。
翔くんの家に戻って渡そうと思ったけど・・・
やっぱ・・・翔くんちのテーブルに置いてくるだけにしよう。
冷やし固めておいたチョコを切ろうとすると・・・・
上手く切れなくてチョコはグチャグチャに。
なんか・・・これを僕の気持ちに包んで渡すってのもなぁ。
奇跡的に綺麗な形のを数個だけ選んで。
小さい器に入れた。
器ごとメッセージを書いた紙を巾着型にして包む。
翔くんがいない時間に忍び込むようにしてテーブルに置いておいた。