智くんが頬杖をついて、新聞を読む俺の顔を眺めている。

いや、眺めているというより・・観察されているような・・・

気がする。

 

「翔くん、口唇荒れてるね」

 

智くんによる観察の結果が報告された。

が・・・口唇は確かに荒れやすいけれども。

今は荒れてないはずだ。

少なくとも、昨夜、風呂あがりに鏡で見た時には荒れてなかったけれども。

現状の確認のため舌で舐めようとした途端。

 

 

「なめたら余計に荒れるでしょ。

ちゃんとケアしなきゃ」

 

そんなこと言われましても・・・

アナタと違ってポケットにいつでもリップクリームを常備はしていない。

さすがの智くんだって、家でまでポケットにリップを入れているわけない。

 

そんな智くんの口唇は相変わらず艶々としている。

 

 

「智くんの口唇はいつでも潤ってるねぇ」

 

「うん、なんでだと思う?」

 

「ちゃんとケアしてるからでしょ?」

 

智くんはしょっちゅうリップクリームを塗り直してる。

活動中は休憩するたびごとに。

家でだって、何か飲み物を飲むごとに。

 

 

「そ、リップをね・・・たっぷり塗ってるから」

 

智くんが急に艶めかしく微笑んだ。

音も立てずに椅子を引いて立ち上がる様は貴族のよう。

俺が座るソファーの背もたれに手を付いて身を屈めて

空いた手が俺の顎をクイッと上げると。

 

口唇が重なる。

 

触れては離れ、また触れてを繰り返す。

時々引っかかる感触があるのは・・・

やっぱり俺の口唇が荒れていたんだろうか。

 

チュッと音を立てて離れる。

 

 

「翔くんに塗ってあげられるように・・・だよ」

 

艶やかさを少し失った智くんの口唇。

さっき見たより紅く色づいていた。

 

 

 

☆★

 

 

お久しぶりです!

こちらではずっと読み専になってますが、まだファンは辞めてません!(笑)

今日はふと、思いついたおはなしを。

二の姫が口唇が荒れて〜って言ってるので思いつきました。

単純!

山とリップクリームと言ったら、これですよね〜