「んじゃ、そろそろ行ってくるね。
・・・智くんは?行かない?」
「ん・・・やめとく」
なんとなくまだダルい。
これは翔くんのせいだからね!
と、思いつつ翔くんを睨んだら、翔くんもわかったんだろう。
苦笑した。
翔くんが事務所に出かけていった。
週に1回定期的に行われてるPCR検査を受けるため。
スケジュールの都合でどうしても事務所に寄れない時は仕事先まで来てくれるけど。
15分もあれば終わるから、たいていは事務所に寄って仕事に向かうことになる。
僕は休止中だから定期的には検査は受けてない。
でも、事務所には所属してるから受けようと思えば受けられる。
症状が出た時にもサポートはするからと言ってもらってる。
翔くんはいつも僕にも一緒に、って誘ってくるけど・・・
陽性反応が出たら困るじゃん。
翔くんと一緒に陽性になったら、怪しまれそうだし。
僕だけ出ても、翔くんが濃厚接触者になっちゃうし。
僕も生活には気を付けてるけど、ジャニーズの仲間たちの感染状況見てると・・・
しばらくベッドでゴロゴロしてたけど。
こんなことしてたら、あっという間に一日が過ぎる。
よっこらせ、とベッドから勢いを付けて起き上がった。
ん・・ちょっと腰がダルいけど、なんとか動ける。
僕は窓を大きく開けた。
普段はエアコンつけっぱなしにしてるけど。
時々、外の空気が無性に恋しくなる。
家に独りでいる時には思いっきり窓を開けて季節を感じる。
体調壊したら困るとか、それほど真剣に考えなくて良くなって。
こんなこともできるようになった。
逆を返すと、こんなことすらできなかった。
熱中症になったら仕事に穴開けてしまう、とか考えると・・・
こんな都会じゃセミの声も聞こえない。
車の走る音が遠くに聴こえるだけ。
夏を感じるのは空の色、ジメッとした熱気、入道雲に夕立。
最近は夕立って呼ばない。
ゲリラ豪雨だよね。
窓を開けておくと、心なしかフローリングがべたつく感じがする。
後で掃除しよっ!よし、ついでに今日は掃除の日にする!
少しずつ体動かせば動くようになるし。
まずは洗濯。
シーツとかタオルとか・・・洗濯物がたくさん出たからな。
洗濯機に洗濯物を放り込んで。
ついでに着てるものも放り込む。
そのまま裸でバスルームに入って掃除。
裸だからどんなに濡れても気にならない。
いつもは手を抜いてる天井も柄付スポンジでこする。
汚れてないようでも汚れてんなぁ。
壁も棚も洗ってると、ゴトっと音がして浴槽のエプロンがまた外れた。
お前も変わんないなぁ。
嵌め込むのも慣れたもの。
翔くんは何回教えても嵌められないんだよねぇ。
最後に自分も洗う。
昨夜、いちゃついてからちゃんとシャワー浴びたわけじゃないからな。
バスタオルを腰に巻いてリビングに戻ると、リビングを風が通り過ぎる。
涼しい風ではないけれど、水気の残った体から熱が奪われて気持ちいい。
頭を勢い良く振ると水滴が飛び散る。
フローリングの上に弾けた水はきっとすぐに乾くだろう。
そのままぺたぺたとキッチンに向かった。
冷蔵庫から水を出し飲む。
松潤から送られてきたお高いらしい水。
僕にはよく効果はわからないけど、美味しい。
勢い良く口に流し込むと口から零れた水が首元から流れていく。
もう熱くなりかけてる肌に気持ちいい。
スマホの通知音が鳴った。
翔くんからのビデオ通話だった。
応答すると、爽やかなイケメンが出た。
次の瞬間、つぶらな瞳がもっと大きく瞠られて。
「アナタ、何してんの!?」
「ん?掃除して、シャワー浴びたとこ」
「あのさぁ・・・俺だからよかったけど・・・
そんな姿で他のやつからの連絡に出ないでよね」
「なんかマズイ?」
「今のアナタ、爽やかそうに見えてそうじゃないからね。
今夜帰ったら、教えてあげるから」
「えー?翔くんのCMっぽくない?
なんか夏で弾けてる感じでさぁ」
「そう見えて、そうじゃないって言ってんの」
なんか納得できないけど。
翔くんがそんな風に言い出したら引かないことは分かってる。
「んー・・・・で・・連絡してきたのは?」
「あー、そうそう。今、事務所で太一くんに会って。
大野は?って聞かれたから・・・連絡入れたんだけど・・・
そんな姿見せらんないから、テキトーに言っとく」
「・・・よろしく言っといて」
太一くんの声が遠くに聴こえた気がする。
そのまま通話は切れた。
さ、掃除しよっ!
その前にパンツ!
☆★
相変わらず、タイトルはテキトーです。
太一くんと翔くんが事務所(のトイレ)で会ったことは事実です。
リハビリで妄想してみたんだけど、どうかな?