僕の前に立った時ももじもじしてた。

青いハートを手にして、なかなか渡してくれなかった。

 

 

「あのね・・・ママ・・・・

だいきらいっていって、ごめんなさい。

らんね・・・ママのこと、だいすき」

 

それだけ言うと、らんは顔をくしゃっとして泣きだした。

あぁ、らんは僕に大嫌いって言ったことをものすごい後悔して。

それを言いたいがために、もしかしてこのハートを作ったのかもしれない。

 

僕はらんを膝の上に横向きにして抱き上げた。

らんは体を固くしてた。

 

 

「ママもらんのこと大好き。

ママにもハートくれる?欲しいな。らんからのプレゼント」

 

らんは僕に抱きついて、声を上げて泣きだした。

らんの涙に誘われて、僕も涙が出てきた。

 

 

「らん、大好きだよ・・・ありがとう。

ありがとうね・・・」

 

鼻声で何回も何回も、らんに伝えた。

らんも何回も何回も、ママだいすきき、って言ってくれた。

 

相葉くんももらい泣きして鼻声になってる。

昨日の出来事を知ってるみんなもホッとしたと思う。

 

涙で濡れたハートはちょっとクシャッとなっちゃったけど。

僕には宝物。

また一つ宝物が増えた。

 

 

涙でベタベタになった顔を綺麗に拭いてもらって。

らんはすっきりした顔をしていた。

僕に抱っこしたままケーキの続きを食べようとしてたんだけど・・・

 

 

「今日はお姫様じゃないの?

甘えん坊のお姫様?」

 

って、潤くんに言われて、自分の椅子に戻った。

 

 

 

その後は事務所でのリハーサル、テレビ局に移動してからのリハ。

歌番組の見学もスタジオの隅っこでさせてもらって。

他の出演者からもお姫様みたいって可愛がってもらって。

らんはホントに嬉しそうだった。

キラキラの笑顔を見せてくれて。

 

 

約束を破ったことは帳消しにできたんじゃないか。

僕たちはみんなそう思っていた。

 

 

でも、そうじゃなかった。

その日かららんはお約束を守れない・・・守らない子になってしまった。