翌朝のサトシは普段通りのサトシに見えた。

 

俺に見せてくれる笑顔に曇りはないだろうか?

抱きしめる体は震えてはいないだろうか?

一昨日の朝と違った様子はないだろうか?

サトシの心に蔭がかかってないだろうか?

 

朝食を運んでくれたサトシに。

 

 

「サトシが元気になるように。

力を分けてあげるキスしようか?」

 

「んふふ。ありがと。

でもね・・・もういっぱい元気もらったよ。

もらい過ぎちゃったかも。

少し翔くんにお返ししないと・・・

翔くんの元気なくなっちゃったんじゃない?」

 

そういうと、まだベッドに腰掛けてる俺の膝にまたがって。

そっと口唇を合わせて来た。

俺の肩口のパジャマをきゅっと握った手が。

心なしかいつもよりも強く握っているように感じた。

 

背中に手を添えて、撫でさすってみると。

緊張を感じる。

添えた手を体に回しサトシを怖がらせないようにそっと抱きしめる。

 

 

「元気が必要なのはサトシみたいだね?

サトシが側にいてくれれば俺の元気は湧いて出てくるから」

 

サトシが元気いっぱいになるように、と。

想いを込めすぎたのかもしれない。

 

口唇を離した時にはサトシの目がトロンと蕩けていた。

 

 

「翔くん・・・今のキス、力くれるキスじゃないよ。

大好きのキス・・・したでしょ?」

 

俺の肩にコテンと顔を伏せたサトシがブルンと体を震わせた。

 

 

「ごめんなさいしたけど・・・

お客さん、元気なくなってないかなぁ?

僕みたいに・・・力分けてくれる人いるかなぁ?」

 

サトシが案じていたことは、俺が考えてたこととは全然違っていた。

 

 

「お客さんはサトシにそうなってもらいたいって思ってたのかもね」

 

「うん・・・」

 

「でも、そういうことができるのってね。

一人に対してだけなんだよ。

そして、もらう方もこの人だけって思ってないとね。

きっと元気にはなれないんじゃないかな。

俺が力分けて上げられるのは、サトシだけ。

サトシも俺からだけでしょ?」

 

俺の肩の上でコクンとサトシが頷いた。