「翔くんは僕のそういう人だもん。

僕も翔くんが元気ないときには力分けてあげたい。

僕は翔くんと結婚してるから・・・

もう他の人と結婚できないけど・・・

いつかあのお客さんにもそういう人ができるといいね」

 

「そうだね。

みんながみんな、結婚できるわけじゃないけど。

それまでは何か違うことで自分で元気を出していくと思うよ。

とりあえず、今日はね・・・・サトシがうんと元気になるように。

一緒にお出かけしようか?」

 

パッとサトシが肩から顔を上げた。

 

 

「え?翔くん、お仕事は?」

 

「今日はお休み。サトシのお仕事もお休みだよ。

おねえさんたちがお休みにしてくれた」

 

「そっかぁ・・・今日は翔くんとずっと一緒にいられるんだぁ」

 

俺の首に腕を回して抱きついてきたから。

表情は見られないけど・・・声だけで分かる。

きっと嬉しい顔をしてるはず。

 

 

「今日はまず最初に買い物に付き合ってくれるかな?

その後、サトシが行きたいところに行こうね」

 

「うんっ!じゃあ、急いでご飯食べなきゃ!」

 

こうしてる間にサトシが運んでくれた食事が冷めてしまっていた。

味噌汁を温めなおす、とサトシは言ったが。

いつも冷ましてから食べてるからそのままで、と。

 

サトシを少しでも離したくなかった。

きっとまだ元気になりきってないだろうサトシ。

触れているだけで元気にしてあげられるなんて。

そんなことはできないことは分かってはいるけれど。

 

俺の足の間で朝食を食べているサトシがふふふと可愛く声を上げている。

時々、後ろの俺を振り返ってはまた、んふふ、と笑う。

元気にしてあげたい、と思っているけれど。

元気をもらっているのは俺の方だ。

 

 

「翔くん?」

 

後ろを振り向こうとしたサトシの動きを遮った。

 

 

「サトシ、今日はいっぱい楽しいことしよう」

 

今日一日が終わったら、気持ちが元気いっぱいになるように。

 

 

「それじゃ、ご飯いっぱい食べなきゃ!

翔くん、おかわりは?」

 

「ありがとう。でもおかわりはいらないよ。

これでもうお腹いっぱいだよ」

 

サトシが俺を想う気持ちはご飯の量にも表れている。