一緒に外を歩く時にはいつも手を繋ぐ。
楽しそうに跳ぶように歩くサトシ。
言葉通りどこかに飛んで行ってしまうんじゃないか。
そんな気がして、ふわんとした一歩ごとに手を握ってしまう。
サトシもそれに応えてくれて、キュッと力を入れてくれる。
信号待ちで立ち止まる時には俺の肩に頭をもたせかける。
「ね?翔くん、どこにお買い物行くの?」
「今日は電車乗って行くよ。行き先は・・・ナイショ」
滅多に来ない場所だからか。高級店が立ち並ぶ場所柄からなのか?
買おうと思っているものがものだからなのか?
妙に緊張している。
サトシと繋いでる手が汗ばんでいるような気がする。
「サトシはどこのお店がいいと思う?」
こういう時にはサトシに任せるとうまくいく。
サトシはクンとその場の匂いを嗅ぐような仕草をすると。
こっち、と俺の手を引いて歩き出す。
何も知らないからなのか?
物怖じしないサトシが頼もしい。
「ここのお店がいいよ。
声がそう言ってる」
ドアマンがにこやかに俺とサトシを出迎えてくれる。
「何かお探しのものがございますか?」
スーツを着こなしている店員がショーケースの向こう側から話しかけて来た。
「結婚指輪を」
「結婚・・・指輪?」
サトシが不思議そうな顔をした。
もしかして、指輪というものも知らないかもしれない。
「そう。結婚したら、特別の指に輪っかを付けるんだよ。
指の輪っかだから、指輪」
店員が結婚指輪があるショーケースを指し示す。
2人で選ぶことにして、店員にはちょっと下がっていてもらうことにした。
「サトシはどんなのがいい?」
「僕・・・分からない。指輪見るのも初めてだもん。
あ、でも、おねえさんたち、左手の指になんか着けてた。
もしかして、あれが結婚指輪かな?」
「そうだね。みんなこの指じゃなかった?」
サトシの左手を取って、薬指を撫でた。