「ん・・そう、この指」
俺の指をキュッと握って、微笑んだ。
「どれがいいか?声は教えてくれないかな?」
「うーんとね・・・教えてくれないみたい・・・」
「自分で選びなさいってことかな?」
「ううん。2人で選んでね、ってこと。
翔くんはどれがいいと思う?」
ショーケースの中のいろいろな指輪を見てみる。
サトシのスラっとした指には銀の細い指輪が似合いそうだ。
控えめな美しさに合うように、つや消しのプラチナのがいいか。
輝く笑顔に合うように、輝いているものがいいか。
温かい心に合うようにちょっと金がかったものがいいか。
どれも似合いそうで、選びかねる。
「ちょっと試しに指に着けてみる?
その方が選びやすいかもしれないね。
サトシは気になったものある?」
「うんとね・・・これとこれ。
翔くんに似合いそうだなって思ったの」
「じゃあ、それ、試してみようか」
店員を呼んで試させてもらう。
サトシにはめてもらって、結婚会見する時のようなポーズを取ってもらう。
いくつかをとっかえひっかえしてみて。
「どう?サトシはどれが気に入った?」
指輪を着けた手を眺めて選んでいるが。
サトシも決めかねている。
「翔くんも着けてみて。お揃いの着けるんでしょ?」
いくつかをお互い付け替えながら、選んでいた時だった。
その指輪を着けたとき。
急に着けたその指輪がほわんと温かくなったように感じた。
サトシも同じだったのか?
お互いに顔を見合わせた。
言葉もなく頷きあった。
「これ・・・だね。この指輪にします」
不思議なことに指輪のサイズが俺たちにピッタリで。
サイズ調整も必要なかった。
聞くと、滅多に入荷しない寡作な作家さんのものらしい。
途中、ひねりが入っているメビウスの輪のようなデザイン。
“永遠”を意味しているデザインなのかもしれない。
ひねりが入っているのに、その部分に違和感は全く感じない。
指にすぐに馴染み、ずっと着けているような感じさえもする。
指輪をケースに入れてもらい持ち帰ることにした。