店を出て、のんびりと歩いて行くと、公園とまでは行かない。
でも緑が繁っていてベンチがあるスペースがあった。
ぽっかりとベンチが空いているので座る。
サトシの膝の上には指輪が入った紙袋。
サトシが持ちたいと言うので持ってもらっている。
宝物のように大事そうに抱えている。
それを見ると俺たちのたまごを抱きしめている姿を思い出す。
「さて・・と。買い物は終わったよ。
この後、サトシはどこに行きたい?」
「ん・・・とね」
と、言ってサトシが困ったような顔をする。
サトシは行きたいところがあるんだな。
行くのが難しいところだから遠慮してる?
「どこかな?」
少し屈んでサトシに顔を寄せた。
「観覧車に乗りたいんだけど・・・
翔くん・・・苦手でしょ?
だからね、どこか他にいいとこないかな?
どっかね、天に近いとこがいいの」
「うー・・・観覧車・・・かぁ」
サトシが一緒なら頑張れなくもない・・・けど。
天に近い、のが条件ってことは・・・サトシは何かしたいことがある??
「天に近いのがいいの?周りに人がいない方がいいの?」
「うん。天にいるお姉ちゃんたちにお話したいの。
だから・・・天に近くて静かなところがいいな、って」
「お話するんなら、ゆっくりお話したいよね?
そしたら、観覧車じゃ時間少ないから・・・
高いところにあって、2人きりになれる場所がいいかな?」
「うん!でもね・・・そういう場所、僕、分からなくてね。
前に翔くんと行った遊園地の観覧車しか思いつかなかったの」
「分かった。ちょっと調べてみようね。
・・・の前に。お腹空いてない?
もう昼過ぎたけど・・・」
「うんとね・・・ホントはちょっとお腹空いた」
「じゃあ、ご飯食べに行こうか。
高いビルの上の方にあって、個室があるお店がいくつかある。
ご飯も食べられるし、天のお姉さんたちにもお話できるんじゃないかな。
観覧車より高いかどうかは分からないんだけど・・・・どうかな?」
「うん!じゃあね・・・僕ね、オムライスが食べたい!」
「じゃあ、洋食屋さんだね。
もうちょっと歩くけど、疲れてない?」
「んふふ、大丈夫。僕、お仕事で毎日いっぱい歩いてるんだよ?」