「手、開いて」

 

サトシ用の指輪には捻られた部分に淡い水色の石が嵌めこんである。

その石でサトシの涙の石を思い出す。

指輪がキラっと七色の光を受けて輝く。

天のお姉ちゃんたちにも、俺たちの結婚は祝福されていると感じる。

俺の手に預けているサトシの手の甲を撫で、薬指まで指を滑らす。

 

 

「この指はね・・・昔の人は心臓・・・心と繋がってると考えていた。

心からの誓いをします、って印として・・・指輪を着けるんだ」

 

指輪ケースから取り出したサトシ用の指輪。

俺の指先ほんわか温めてくれるように感じる。

 

 

「サトシの・・・この指に俺からの指輪、着けてくれる?」

 

サトシが俺に預けている自分の手から俺の顔に視線を移す。

瞠った瞳が潤いを増す。

 

 

「うん・・・・着けて。

翔くんと一生の誓いしたもん。

その・・・印ってことでしょ?

着けて欲しい」

 

サトシの指先にキュッと力が入り、俺の指を包む。

そんなサトシへの愛おしさが胸に湧いてくる。

あぁ、サトシに出会えてよかった。

天がサトシを俺のところに落としてくれて・・・

なんて運が良いんだろう。

他の誰かのところにサトシが落ちてしまったら・・・

こんな気持ちは一生知らないままだったかもしれない。

こんなにも誰かを愛おしいと思うことはなかっただろう。

目頭が熱くなってくる。

 

手にした指輪をサトシの指にゆっくりと差し込んでいく。

すらっと細いサトシの指に吸い込まれるように指輪は嵌った。

まるでここに嵌るために作られたように。

サトシは嬉しそうに着けられた指輪を光に掲げて眺めている。

お姉ちゃんたちに見せているのかもしれない。

しあわせなサトシの姿をゆっくり見せて。

お姉ちゃんたちを安心させてあげて欲しい。

 

 

「翔くん・・・指輪・・・綺麗だね」

 

「そうだね・・・サトシがね。

いつもより、とっても綺麗になったよ」

 

それが俺と誓いをしたからだとしたら。

これ以上ないしあわせだ。

 

 

 

「さあ、サトシも俺の指に着けてくれる?」

 

左手をサトシに差し出した。

サトシが指先で摘むようにケースから取り上げた。

 

 

「あったかい・・・・」