「お腹いっぱい」

 

サトシがふわふわと微笑む。

手をつないで歩く街は全てがキラキラしている。

サトシがまだ七色の光で覆われて見えるけれど・・・・

待ちゆく人には、この光が見えてないようだった。

サトシと俺だけに見える光。

天に祝福され、守られている証としての光だと感じている。

 

まだ家に帰るには早過ぎる気がする。

かと言って、どこかに出かけるにはちょっと遅い気もする。

そんな中途半端な時間。

 

 

「サトシ、この後、どこか行きたいところはある?」

 

「ん・・・あのね」

 

と、一言の後、言おうかどうしようか?

悩んでるような、困ってるような顔をしている。

 

 

「サトシがしたいことならなんでもいいんだよ?」

 

そう水を向けると、困った顔のままで口ごもりながら話す。

 

 

「僕・・・お仕事行ってもいい?

今日、おやすみにしてもらったけど・・・

ホントは特売日ですごい忙しいはずなの。

僕がおやすみした分ね・・・

おねえさんたち、すごく忙しくなっちゃったんじゃないかな。

少しお手伝いしたいな、って」

 

おねえさんたちがゆっくり二人で過ごすように、とくれたお休み。

サトシにとってはもう十分すぎるほどにゆっくりできたのか?

結婚を申し込まれたショックがもう和らいだのか?

仕事に気が向いたことはサトシにとっていいことだと思う。

俺はちょっと寂しいけれど。

 

 

「うん、じゃあ、急ごうか。

もうすぐ夕方の忙しい時間でしょ?」

 

 

申し訳なさそうな顔をするサトシだけど。

そんな顔しなくてもいいんだよ。

俺はそんな風に思うサトシが大好きだから。

 

そんな思いが伝わるように・・サトシと繋いだ手をキュッと握った。

サトシもキュッと握り返してくれる。

駅へと向かう足が自然と速まった。

 

 

 

 

スーパーのお仕着せのエプロンを着けたサトシは可愛い。

いつも何着ていても可愛いけれど。

エプロンがよく似合っていると思う。

 

 

「おや、サトシちゃん、おやすみだったのにどうしたんだい?」

 

バックヤードに戻ってきたリーダー格のおねえさんが声をかける。