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☆★

 

 

「特売日で忙しいかな、ってお手伝いしにきたの!」

 

「いいのかい?せっかくの二人のデートだったのに」

 

俺の方へちらりと視線を流して尋ねてきたから軽く頷いて。

大丈夫だと、伝える。

おねえさんがじーっと俺の顔を見て。

何かに納得したようにうん、とうなづいた。

 

終わる頃に迎えに来るから、それまでサトシをよろしくお願いします、と。

おねえさんたちに頭を下げた。

 

 

「サトシちゃんが来てくれて助かったよ。

特売だから品出しが間に合わないところも出てきててね」

 

俺の肩をポンと軽く叩くと店面へと向かう。

遠ざかっていくおねえさんとサトシを見送って。

俺は家に帰ることにした。

 

 

 

 

仕事終了時間の5分前に着くように家を出る。

空には星が瞬いている。

心なしか普段よりも星が綺麗に見える。

俺の気持ちが澄み渡っているせいなのかもしれない。

ただ、純粋にサトシを想う気持ちが俺の汚れを拭い去ってくれているようで。

全てのものを美しく彩っていくような気がしている。

 

時々立ち止まっては、空を見上げ。

星の美しさにサトシを想い。

なぜだか分からないけれど、涙が溢れそうになる。

 

胸に手を当てて、サトシに早く会いたいと思う一方で。

この美しく彩られた世界をもっと見ていたいとも思う。

 

5分前に着く予定だったのが、着いてみると終了時間ちょうど。

勝手知ったる関係者入り口から入る。

すれ違うおねえさんたちに挨拶をすると。

 

 

「やっと、指輪つけさせたんだね。

これで、サトシちゃんを狙ってた子たちも諦めつくだろうよ」

 

バシっ、と肩を叩かれる。

すれ違うおねえさんたちに次々に肩を叩かれて。

少し痛みを感じるその強さ。

今まで何も言われなかったけれど。

かなり心配をかけていたことを知った。

 

 

「ありがとうございます。

これからも、サトシをよろしくお願いします」

 

頭を下げると、おねえさんたちの声が聞こえた。

 

 

「アタシたちはね。あんたも含めて面倒見るつもりだよ。

サトシちゃんはアタシたちの子どもみたいなもんだ。

子どもの連れ合いも子どもだからね。

指輪着けたってことは、アンタも覚悟決めたんだろ?

腹括った子どもの応援しなきゃ、アタシたちも女が廃る」

 

頭を上げると、見守ってくれている顔が増えていた。

心強い味方がこんなにいる。

サトシが作った味方だ。

何も分からず、この世界の俺の腕の中に落ちてきて。

 

お仕事する、って笑顔で働き始めたけれど。

きっと、大変な思いをして、一つ一つ。

この世界に馴染んでいったに違いない。

いつだって、優しくて、強くて。

そんなサトシを母親のように見守ってくれるおねえさんたち。

何事にも一生懸命なサトシだからこそ。

母親のように見守ろうと思ってくれてるんだろう。