「ありがとう・・・ございます」
鼻の奥がツンと痛む。
込み上げてくる何かが溢れないようにしようと思うのに・・・
我慢しきれない。
「翔くん?どうしたの?」
店の方からサトシが駆けてくる軽い足音が聞こえる。
俯いて涙を拭う俺の姿を見て。
俺のことを背中に庇うようにしておねえさんたちとの間に立つ。
「おねえさん・・・翔くんに何、言ったの?」
サトシの怒ったような、困ったような声がする。
「サトシ、これは嬉しいの涙だよ。
おねえさんたちがね。
嬉しい言葉をくれたんだ」
サトシの小さくて大きい背中に声をかけた。
くるっと俺の方へ振り向いたサトシへ微笑む。
嬉し涙はまだ溢れてくる。
「サトシも嬉しい時に、涙でるでしょ?」
「うん・・・翔くんが大好きだなぁ、って思う時とか・・・」
それ以上は言わせないように、胸の中に抱き込む。
「サトシと俺は結婚しました。
サトシの家族にも祝福してもらいました。
おねえさんたちに・・・今までご心配おかけしてて・・・
これからも・・・サトシを・・・俺たちを・・・
よろしくお願いします」
サトシも俺の腕の中から抜け出すと、おねえさんたちへと向き直る。
「うん、僕たちね。
今日、結婚したの。
天のおねえちゃんたちも喜んでくれた。
これからずっと、翔くんと一緒なんだ。
翔くんは、僕のこと、本当に大好きでいてくれるの」
「そうかい。
サトシちゃんは幸せなんだね?」
「うん!すごいしあわせだよ。
翔くんのところに来られて。
すっごい嬉しくてしあわせ」
俺たちの前にずらっと並んだおねえさんたちの顔がますます柔らかくなる。
口々に祝福の言葉が俺たちへと送られる。
リーダーのおねえさんがニヤッと笑う。
「じゃあ、今夜は初夜だね。
明日、仕事に来られなかったらお休みしてもいいからね。
今日お休みだったのに、特売だからって、出てくれたから。
明日はその分のお休み。
翔くんと仲良くするんだよ」
「翔くんとはいつでも仲良しだよ?」
不思議そうなサトシの肘を引っ張る。
俺の顔はきっと真っ赤になっているに違いない。
「ありがとうございました!
お先に失礼します!」
居並ぶおねえさんたち全員に届くように、と声を張ったら・・・
裏返った。