士郎正宗氏は言うまでもなく「攻殻機動隊」の作者であり、10代の頃の私に影響を与えまくった人である。

たとえば、私が「残念」を動詞として使うのは、もろに「仙術超攻殻ORION」の影響である。
( 残念する = 念(想い)が残る)


んで、「攻殻機動隊1.5」を久々に読み返したら、作者自身による作品解析が面白かったので、抜粋


FAT CAT (初出1991年) より
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 お金を儲けるのは難しいが、正しく使うのはもっと難しい。世の中には「公開したらまずい」「公開しないほうが好ましい」「公開すべきではない」情報がたくさんある。何がそうかは難しい問題だが、何でもかんでも公にすればよいという主張には賛成できない。
 皆さんもネットワークマシンはリスク管理しておきましょうね。
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DRIVE SLAVE (初出1992年) より
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 物語設定上、死体を利用する必然性は無いのだが、分かりやすさ優先でこうした。黙示録の「~死者が地上に溢れて~」は勿論「戦争や飢餓で」と解釈するのがストレートだが、「人間としての心や判断・思考力が失われた」状態を死体とする解釈もある。「欲望や盲信、自分の利益」のみを追求する非人間的な人間が確かに増えているようだ。
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MINES OF MIND (初出1995年) より
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 タレ流されたウイルスがいつまでもネットワーク上を漂ってハタ迷惑というお話なのだが、迷惑なのはウイルスだけに限らない。単に古い情報や間違った情報、デッチあげ、悪意ある扇動情報や悪意のない扇動情報(これがもっとも悪質か?)も充分にハタ迷惑だ。
 見分けるのが困難な分、ウイルスよりも危険だと言える。自分に見える範囲の現実と照らし合わせて、皆さん気をつけましょうね。
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LOST PAST (初出1996年) より
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 情報は無ければ漏れない。隠そうとすればするほど漏れたりする。また、「オオカミが来たぞ少年」はオオカミを有効に機能させるための必需品だ。「オオカミが来たぞ少年」の村はなぜ彼に踊らされたうえオオカミに襲撃されたのか、どうすればそうならずに済んだのか、皆さん気をつけましょうね。
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尚、作品解析の日付は2003年7月23日。
手持ちの単行本「攻殻機動隊1.5 HUMAN ERROR PROCESSOR」の第1刷発行は2008年3月6日であった。

「古い作品だから陳腐化している」って訳でもないよなとつくづく思う。


アクションが取り立てて派手というわけでもなく、人情話もほぼ無く、メインストーリーが解りにくいという困った作品が多いが、それだけで「つまらない」としてしまうのは勿体ない気がする。
解りにくいからと敬遠すると、折角の機会が無くなってしまうので、皆さん気をつけましょうね。



付記 劇場版 攻殻機動隊 2作目「イノセンス」より
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幸運が三度姿を現すように、不運もまた三度兆候を示す。

見たくないから見ない、気がついても言わない、言ってもきかない。
そして破局を迎える。 


だが俺たちの世界じゃ、三度どころか最初の兆候を見逃せば終わりだ。
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気をつけましょうね>俺