AV出演拒否事件 | 大江ゆかりのブログ

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平成24年度新司法試験再現答案。
私は『とめはねっ!』に出てくる鈴里高校書道部唯一の男子部員、帰国子女です。
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労働平28重2 AV出演拒否と違約金請求
東京地判平27・9・9  LEX/DB文献番号25542383

<<事案>>
芸能プロダクションを経営する会社が,出演が予定されていたAVの撮影をキャンセルした女優に対し,営業委託契約違反の債務不履行にもとづき,AV制作会社から支払われるはずであった出演料1980万円等の合計2460万円の損害賠償等の支払いを求めた。
<<結論>>
請求棄却(確定)。

<<判旨>>
1 本件契約(第1次・第2次契約)は,会社が女性を所属AV女優として抱え,会社の指示の下に会社が決めたアダルトビデオ等に出演させることを内容とする雇用類似の契約であったと評価することができる。 
2 2年間という期間の定めのある雇用類似の契約とみることができるから,契約上の規定にかかわらず,「やむを得ない事由」(民628)があるときは,直ちに契約の解除をすることができる。

3 アダルトビデオへの出演は,会社が指示する男性と性行為等をすることを内容とするものである。出演者である女性の意に反してこれに従事させることが許されない性質のものである。
    ↓
 会社は,女性の意に反するにもかかわらず,女性のアダルトビデオへの出演を決定し,女性に対し,第2次契約にもとづいて1000万円という莫大な違約金が発生することを告げてアダルトビデオの撮影に従事させようとした
    ↓
 女性には,第2次契約を解除する「やむを得ない事由」があった。
    ↓
 女性がアダルトビデオの撮影に出演しなかったことは,債務不履行に当たらない。
 損害賠償請求は,認められない。

<<コメント>>
1 AV出演契約を期間の定めのある雇用類似の契約として,「やむを得ない事由」(民628)があれば直ちに解除できるという規範を立てています。
2 「やむを得ない事由」の有無につき,AV出演が性行為等を内容とすることから「女性の意に反してこれに従事させることが許されない」性質を有するとしたうえで,莫大な違約金を課して出演せざるをえないように仕向けたことから,「やむを得ない事由」があったと認めました。
3 事例判例ですが,女性の救済の見地から法律構成を考え,契約の内容・性質を考慮して,解除原因があったと認めて,損害賠償請求を斥けました。


※ なお,平成28重判は未刊です。