アイドル恋愛禁止事件 | 大江ゆかりのブログ

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平成24年度新司法試験再現答案。
私は『とめはねっ!』に出てくる鈴里高校書道部唯一の男子部員、帰国子女です。
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労働平28重1 アイドルの恋愛禁止違反と損害賠償請求
東京地判平28・1・18  LEX/DB文献番号25542337

<<事案>>
芸能プロダクションを経営する会社が,専属マネージメント契約を締結したうえで会社に所属する女性アイドルA,Aと交際していたファンB,Aの父母であるC・Dに対し,AとBが交際を機に共謀のうえイベント等への出演業務を一方的に放棄するなどして会社に逸失利益等の損害を生じさせたとして,A・B・C・Dに対し,債務不履行又は不法行為にもとづく損害賠償請求をした。
<<結論>>
請求棄却。

<<判旨>>
1 異性との交際,異性と性的関係をもつ自由
 異性との交際,当該異性と性的な関係をもつことは,自分の人生を自分らしくより豊かに生きるために大切な自己決定権そのものである。
 異性との合意にもとづく交際(性的な関係をもつことも含む。)を妨げられることのない自由は,幸福を追求する自由の一内容をなす。

2 異性との交際,異性と性的関係をもつ自由を制約する契約の当否
 契約により,損害賠償という制裁をもって上記自由を禁ずることは,いかにアイドルという職業上の特性を考慮したとしても,いささか行き過ぎな感は否めない。
 所属アイドルが異性と性的な関係をもったことを理由に,所属アイドルに対して損害賠償を請求することは,上記自由を著しく制約するものである。

3 損害賠償請求が認められる要件
 Aが異性と性的な関係をもったことを理由に損害賠償を請求できるのは,Aが会社に積極的に損害を生じさせようとの意図をもってことさらこれを公にしたなど害意が認められる場合等に限定して解釈すべきである。

<<コメント>>
1 異性との交際,性的関係をもつ自由を自己決定権,幸福を追求する自由の一内容と位置づけ,それを制約することの当否を検討している。
 そのうえで,会社が女性タレントに契約違反による損害賠償請求できる場合を「害意」によって限定している(害意の要件)。
2 本件では,Aがライブに出演せず連絡にも応じなかったことにより,関係者に迷惑がかかったことくらいはうかがえるが,金銭的賠償が必要なほどとまでは認められない,とした。

3 出演タレントのイメージが重視されるCM契約の場合は,本件とはまったく事例が異なることに留意が必要。


※ なお,平成28重判は未刊です。