2018年2月読書メモ | あざみの効用

あざみの効用

或いは共生新党残党が棲まう地

 

 

 

 

 

羽生永世7冠誕生に続き、藤井六段誕生の一局(後者は二局)を最初から最後まで観戦できたのは望外の喜び―。キャラ頼りの一過性のブームではなく、将棋そのものの魅力による裾野の拡大にまで至りますように。

 

 外交(歴史といってもよい)を評価するには点ではなく線での評価が必要。個別の論点の都合いいつまみ食いはできない。今では悪評高い靖国「問題」や歴史教科書の近隣諸国条項も「冷戦下に於ける日米同盟」のもとでの一石として理解しなければならない。

 タカ派に位置する中曽根総理だからこそ近隣諸国のナショナリズムにも配慮できたこと(翻って不文律の防衛費1%枠撤廃時には鳩派の宮沢派に大蔵・防衛庁を委ねる)、世界戦略なき小石に拘る有象無象こそが足を引っ張ったこと(おそらくエントロピーよろしく何も力が加わらなければ今頃忘却された可能性すらあると思う)など、政治家発言や当時の論説など数々の文献に丁寧にあたることで時系列的に当時の外交を評価することを可能にする大部。

 …そして同じ視線で現代政権を評価することも可能にする。

 これは知的興奮の宝庫、単なる一食材のエピソード集と思ったら大間違い。既有の人類史に関するイメージすら覆りかねない一冊。現世人類がアフリカから生まれて世界各地に広がっていくにおいて、内陸部を徐々に移動したというイメージを抱いていたが、内陸部と同様にいやそれ以上に、もしかしたら重要かもしれないのがモンテヴェルデ遺跡や「ケルプ・ハイウェー仮説」に代表される現生人類はジャイアントケルプを伝って世界に広まったという仮説だ。すなわち狩猟から牧畜・農耕社会への発展と同様に漁撈社会があったという事実だ。

 この点確かに三内丸山のイメージは強力だが、一般には各地で発見される貝塚に代表されるように海藻や貝が主食として日本社会は成り立っていたように考えるほうが説得的だ。そしておそらく陸上の狩猟より漁撈社会の方が安定的だったからこそ土器が発明されたのもメソポタミア文明六〇〇〇年前<縄文文化一三〇〇〇年前となったのだろう。

 また過去だけでなくこれからの持続可能な社会を構想する上で、海藻なき社会は考えられない。生産性、栄養価の高さだけでなく、すでにフィココロイド(ゲル化・乳化剤)として現代社会に組み込まれつつある。この本では日中韓の海藻との歴史に頁が割かれているが、翻って欧米社会が海藻を忌避した理由も素描する。すなわち、航海技術未熟な時代において海藻に取り囲まれての遭難死は当たり前で、恐怖からやがて嫌悪(陸上で人類が育てたもの以外は野蛮)へと価値を転換、しかし陸上の汚染が広まるに応じて太古の価値が復権していく…スキンフード、タラソテラピー。

 単一エピソードとして本当に驚いたのは日本の海藻の養殖が本格化するのは、戦後キャスリーン・ドゥルー=ベイカー博士の発見あってのものだということを初めて知った(有明ではドゥルー祭すら行われている)!