少年は、母親と妹、祖父の4人暮らしでした。母は、祖父がしていたダンプカーの運転手を引き継いでいるそうです。少年の言葉の端々から母親に対する愛情と、今回の件で迷惑を掛けたことに対する反省が感じられました。ただ、言葉足らずなところがあり、被害者に対する反省を自分の言葉で語ることはできない様子でした。



私は、少年の年齢や態度から、事件自体は非常に重大犯罪だが、きっと少年院送致に留まるだろうと高をくくっていました。少年院送致は重い処分ですが、それでも、「逆送」といって、成人と同じ刑事裁判を受ける手続きに比べれば軽いといえます。例えば、逆送によって地方裁判所に移送され、その裁判で懲役刑の実刑判決が出た場合、少年刑務所に収容されることになってしまいます。当時、オレオレ詐欺が社会問題となっており(今もそうですが)、これに関与した被告人には非常に重い刑罰が科されていました。



ところが、少年の審判期日の直前に家庭裁判所の調査官が作成した報告書を確認したところ、調査官の意見は「逆送」が相当となっていました…。事前の調査官との面談では、少年院送致の意見を書く予定だと話していたにもかかわらず、やはりオレオレ詐欺の社会的な影響を考えて、一段重い処分を考えたようです。



少年審判の場合、家庭裁判所調査官の意見は、非常に重視され、審判官(裁判官)は、調査官の意見通りの審判を下すことがほとんどです。しかも、調査官の意見書は、審判期日の3日ほど前に閲覧できるようになるため、そこから付添人である私ができることといっても限られています。



意見書を目にしたときには、私もかなり動揺しましたが、ある決意を胸に審判に臨みました。



審判の結果は、明日に続く!