御存知の通り、鉱物には様々な色があるです。

鉱物種として同じ物であっても色の違うものがありますね。 例えば

ベリルという鉱物の場合、緑はエメラルド、水色ならアクアマリン、黄色で

ヘリオドール、赤いとレッドベリル、透明ならゴシュナイトです。 他にも、

青いとサファイア、赤いとルビーですが鉱物種としては同じコランダムです。

 

左:サファイア(国内産) 右:ルビー(マダガスカル産) 

 

知覚情報の約8割を視覚に頼っている人類では、「判別する」ことを「見分ける」と

する事がまずは優先されたのも仕方ないでしょう。 実際、動植物ではある程度

それを出発点としても後の検証でそれが証明される事も多々ありました。

 

生物であればDNA解析などで種の分類は可能ですが、鉱物に関しては元素の

組成が均一の状態の物と定義されている為、組成はそのままに部分的に元素が

置換された物も一種とされます。 上記のコランダムもその一例ですね。

ルビーはクロム、サファイアは鉄の混入とされています。

 

鉱物の色についてお話をするには、まずは「色」という視覚効果からの説明に

なってしまいます。(汗)  なるべく簡単に、誤解の無いように書くつもりですが

間違いがあったら是非ご指摘ください。

 

色というのは、全て光の存在が前提となります。

物体に光が当たった時にどんな反応をして、それが人間の視覚にどう映るかで

色が確定します。 詳しい説明をすると長くなるので割愛しますが、光が物体に

当たった時に「透過」「反射」「吸収」という作用が生じます。 光というのは粒子と

電磁波という2つの性質を持つとされていて、物体に当たった際の波長の反応で

色を認識できるというメカニズムとされています。 全ての波長が透過されれば

「透明」、反射すれば「白色」、吸収されると「黒色」となりますが、特定の波長が

反射されて他の波長が透過または吸収されると、反射された波長を「色」として

認識できるわけです。 色のついた石でも透明・不透明があるのは、その他の

波長が透過したか吸収されたかの違いであり、不透明なものの内、吸収されず

表面付近で殆どの波長が反射されたもの(界面反射)が「金属光沢」になる・・・と、

簡単に言えばそんな感じです、多分。(笑) (参考;Wikipedia)

 

鉱物に当たった光を「透過」「反射」「吸収」させるのは、構成する原子や分子構造が

主な要因です。 故に、特定の波長を反射しやすい性質を持つ元素もありますね。

マンガンは赤やオレンジ、クロムは赤や緑とか、鉄だと赤だったり青だったり。

単純に元素の性質ならば単一の色になるのでしょうが、周囲の元素や分子構造に

より波長が増減したりします。 尚、「コバルトブルー」なんて言葉がありますが、

実はコバルトは赤を発色しやすいです。 俗に「コバルト翡翠」と呼ばれる青い

翡翠の発色の要因は、コバルトではなくチタンや鉄の混入によるとされています。

 

左:輝コバルト鉱。 若干の赤味を帯びた銀白色。(愛知県産)

右:「コバルト翡翠」と呼ばれるもの。上記の通りコバルトは含まれない。(新潟県産)

 

鉱物の色と言えば、オパールやラブラドライト、レインボーなんちゃらなどwひとつの

鉱物であっても多様な色彩を呈する物が知られています。 また、アレキサンドライトや

ゾイサイトなど、光源の種類や見る方向で色が変わって見える物もありますね。 

前者のタイプは遊色(イリデセンス)、後者は多色性(カラーチェンジなど)と呼ばれます。

こうした物はどういう仕組みでいろんな色が見えるのでしょうか・・・。

 

判りやすい例としては「プリズムによる光の波長の分割」があります。

透明な物体に斜角で入った光が屈折する際に波長の違いで分割されるというもので、

理科の実験などでもお馴染みでしょう。 例えば、透明な水晶を動かして見ていると

部分的に虹色が見える物がありますが、こうした物の多くは内部にあるクラックや

インクルージョンによってこの効果が表れている事が多いです。 ダイヤモンド等の

ラウンドブリリアントカットも屈折率を計算した上で綺麗に輝くよう設計されています。

 

平板状の水晶が複雑に重なったサンプル。接触面や内部のクラック等でプリズム

効果が表れている。 (滋賀県産)

 

遊色の出る石で有名なものはもうちょっとメンドクサイ条件で色がでるのです。(汗

基本的には上記の「波長の分割」といえるのですが、もうちょっと複雑な要因で

遊色を示す物がオパールやラブラドライト等に現れる効果で、鉱物中の結晶格子に

よる光の回折・拡散反射などによって齎されるです。 これには前出のプリズム効果

も含め、結晶格子の歪や分子結合の部分的変化、元素の置換など様々な要因で

人間の視覚にも非常に判りやすく色が確認できるというわけです。 結晶格子による

光の回折効果というのは身近にもあって、例えばCDやDVDなんかの記録面が

虹色に見えるのは単純なプリズム効果ではなく光の回折や干渉など複雑な影響を

受けた結果であると言えます。

 

左;レインボーガーネット。アンドラダイトの成長過程で熱水脈の影響を受けて

  結晶構造に歪みができて複雑な色彩が出た物。(奈良県産)

右;オパール。 組成に水が含まれている為、ある意味色彩変化が起きやすい

  のかも知れない。遊色鉱物としては最もポピュラーなもの。(愛知県産)

 

また、金属鉱物が遊色を示す場合にはほとんどの場合が表面の酸化によるのに

対し、非金属鉱物で遊色を示す場合は珪酸塩鉱物が多く見られます。 これは

珪酸粒子の組成の違いや水酸基を取り込んだりする為に上記のような状況が

起こりやすいのではないかと思っています。 上記の回折や干渉など複雑な要因が

大きいのでしょう。

 

多色性のある石は逆にもう少しシンプルで、結晶構造は比較的均一になります。

均一なのに、見る角度や光源の種類で色が変わるのは・・・。

 

例えばですが、水晶は1つの珪素と2つの酸素という組成です。 当然ですが珪素と

酸素はサイズも性質も異なる訳で、その3つが組み合わさった最小単位としては

見る角度によって形や見え方も変わってきます。 珪素と酸素の性質上、たまたま

どこから見ても透明に見えるだけであって、多色性というのはこうした分子構造上の

観測位置の違いというのが顕著に表れた結果と言えます。 実際、水晶には色は

変わりませんが「複屈折」という性質があり、然るべき厚さがある水晶を一定方向から

通してみると物が2重に見えるです。 こうした性質は人間の視覚判断であって、

事象的には色が変わって見えるという事とそれ程違わないのだと思います。

 

方解石の複屈折。 水晶よりも程度が大きいので厚さが少なくても観察しやすい。

 

光源による色の違いは俗に「アレキ効果」と呼ばれ、アレキサンドライトの他にも

サファイアやガーネット等でも認められるものがあります。 これについては基本的に

光源に含まれる波長の違いです。 例えば、鉱物に限らず大抵のものは日光と

白熱灯、蛍光灯やロウソクの灯りなど、照らす光によって色が微妙に赤味がかったり

淡くなったりすると思いますが、アレキ効果の石の場合はこれが極端に起こっている

という事になります。

 

鉱物の判別方法のひとつに「条痕色 (Streak)を見るというのがあります。

これは、鉱物を非常に細かい粉末にした状態の色を見るというもので、鉱物種の

本質的な色を見て判断するという手法です。 やり方として数種ありますが通常は

条痕板という素焼きの陶器に擦りつけて見ます。 この陶器は概ね硬度が6前後

なのですが、ぶっちゃけ硬度7以上の鉱物の条痕色はほぼ白になるのです。

つまり、ルビーもサファイアもエメラルドもアクアマリンもアメジストもオパールも

タンザナイトもアレキサンドライトもラブラドライトも・・・粉にしたら白です。(笑)

 

逆に、古来より顔料・染料として使用されていたマラカイトやラピス・ラズリなどは

当然条痕色も同色です。 鉱物由来であり、酸化などの影響で変色・退色しないと

いう性質を見極めた古の賢者には頭が下がる思いです。

 

光には、人間の視力では捉えられない波長「紫外線・赤外線」がありますね。

鉱物種によっては、紫外線で蛍光する物があったり放射線や加熱処理すると

色が変わってしまうものがあります。 日光の紫外線に当て続けると色が薄く

なったり、普通に保存しているだけでも乾燥や酸化等で色を失ったり変化したり

するものがあるので注意が必要です。 このあたりはまた別のところでお話を

したいと思います。

 

充分長くなりました。(笑)

判りづらかったらスミマセン。 でも、これ以上判りやすく言うとさらにメンドイです。

色は鉱物の魅力の大きなポイントだと思うので少しでも知って頂けたら嬉しいです。

 

私は嫌いになっても、鉱物は嫌いにならないで下さい。(笑)