鉱物に興味を持つ方のきっかけは様々です。

 

カットされた宝石としての魅力や天然石の色彩や造形美であったり、

パワーストーンやスピリチュアル系のアイテムとしてなど、いろんな方が

興味を持って下さっています。 概ね、そうした方々はショップで購入される

事が殆どでしょう。 正直なところ、私もそれをお勧めします。(笑)

 

SNSなどでいろいろお話したりしていて、私が採集趣味だと言うと「自分でも

採ってみたい」という方が結構おられますね。 これは個人的には嬉しい事

なのですが、この「鉱物採集」という趣味は意外にもデリケートな要素が多い

のです。「そんな面倒くさいこといいから、どこで水晶とれるか教えて」とか

言われる人には、採集趣味の経験者は絶対に何も教えてくれません。

まずは採集という趣味の実情と、鉱物に関する知識を最低限持って臨んで

頂きたいと思っています。 今回はそんなお話をしようと思います。

 

鉱物に限ったことではありませんが、どこかで何かを採ってくるという事は

(自分の所有地でない限り)他者の土地から採ってくることになります。

(この場合の他者は国有地などの公的機関の管理地も含みます)

普通に考えれば、まずは立ち入りの許可、そして採集の許可を地権者に

得るのは当然です。 例えばとある水晶産地の山が個人所有だったらそれで

事は済みますね。 しかし公有地となると私たちの認識が間違っている場合が

多いようです。

 

例を挙げると、河原の砂や石を持って帰ってもいいか? という件なのですが

国内の河川は全て等級分けされ国交省及び地方自治体の管理下で河川法の

適用を受けます。 川に入ったり泳いだり、落ちてる小石を拾って持ち帰ったり

などは厳密にはアウトです。 以前ニュースで出ていた、河川敷を畑にしていた

問題も同種のエビデンスだと思います。 このように、一般的に自由に出入り

出来る公共の土地を「好きにしていい」と判断するのが間違っているのです。

 

国内における未採掘の鉱物資源については「鉱業法」等の適用を受けます。

これによると、鉱業権者又は租鉱権者の持つ区域(鉱区)で採取された鉱物に

ついては彼らの所有物となり、鉱区外では所有者のない動産とされています。

これを極端な例えでご説明してみます。 法律は詳しくないので誤認があるかも

知れませんが・・・(汗

 

ある土地で輝安鉱が採れると聞き、土地の所有者に立ち入りと採集の許可を

貰って採集しました。 持ち帰ったサンプルの中に金色の部分があって、解析

したら自然金でした。 ヒャッホーヽ(´-`)ノ


はぃ。 この場合の金の所有権は、その土地が鉱区ならば権利者、鉱区外であれば

採集者が持てることになります。 この場合の採集とは、「その土地から切り離された」という状態を言います。(鉱業法第8条「分離鉱物の帰属」より)

つまり、たとえ許可を得て採集した物であっても、それが鉱区内の物であって

権利者が「あ、やっぱそれ返して」って言われれば返さなければいけません。

逆に、鉱区外の採集品であれば土地から切り離した時点で自分が所有権を

主張できます。 こう聞くと難しくハードルの高い趣味だと思われそうですが。
 

魚釣りだとしても、防波堤などの港湾施設は元より砂浜や磯場等の海岸線も

所有者・管理者のいない場所はまずない筈ですし、魚介類を採るという事は

これまた厳密に言えば漁業法等が適応される行為となります。 このように

極端な判断をすると「採集」する趣味は大抵グレーな部分を持つことになります。

 

自然の産物を採集するという趣味において、対象が「生物か否か」というのも大変

大きな問題です。 魚釣りや昆虫・植物採集等であれば、乱獲されて絶滅の危機に

瀕しても保護活動や人工飼育など、現代では手段としては(それが全て機能して

いるかはともかく)認識されています。 ところが鉱物は「最悪オスとメスがいれば

次の子孫が生まれるよね」という訳にはいきません。 例えばある産地で水晶が

沢山採れたときに「少し残しておこう」としても、それらが増えたりするわけもなく

次に来た人に採集されて減り続けるだけなのです。 勿論鉱物も自然界において

新たに生成されてもいますし人工的に作る事も可能になっています。 それでも

やはり時間的な生産性・再現性なども含め、生物由来の物との比較には大きな

隔たりがあるような気がします。

 

鉱物に興味を持つ方が増える事はとても良い事だと思っています。

実際、現代文明の科学技術は殆どが鉱物から得られたと言っても過言では

ないでしょう。 それなのに毎年新種の鉱物が未だに発見され続けています。

多くの人が鉱物に興味を持てば、人類は更なる進歩を進められる可能性が
広がっていくのだろうと思っています。

 

鉱物採集に興味を持ってくれる方には、この「鉱物採集入門」という投稿を
何回かに分けてご案内しようと思っています。 スパンは非常に長くなりそうですが
私の経験を踏まえてご紹介したいと思いますので、気長にお待ち下さい。
次回第1章以降では実際に現場での事などもお伝えしようと思います。

 

今回はこのへんで。