新しい家に住み、母は一からやり直すといっていた。そんな簡単に、
我が家を変えることはできるのだろうか? 父はしばらくの間、
不思議に暴れることはなかった。このまま暴れがおさまって、
今までのことが夢であったと思えるようになるだろうか? 母の
はしゃぎようを見て、僅かばかりだが、私も期待をもってみた。
父の酒飲みは、ちょっとした環境の変化というだけのもので、
私たちの願いは呆気なく、カーテンコールを向かえてしまった。
父の暴れは治ることはなく、日増しに新しい家のガラスを叩き
割っていった。少しでも期待をもった私はショックでしかなかった。
また、自由が奪われる。何にも事情は変わっていない。以前のままだ。
それからクソ恥ずかしいような放浪生活が始まり、また以前のように
知り合いを頼って、一晩泊まらせて下さいと呪文のようにいいながら、
深夜、母と祖母と私は街を徘徊していた。