翔の後を追って行くと、我が家の最寄り駅まで来たので、電車に乗るのかと思っていると、電車には乗らずに駅の反対側に向かって歩いて行った。なんだ!家の近所にいるようだ!
駅から、徒歩で15分ほど歩いた場所には集合住宅やアパートが立ち並んでいた。そのなかにあるアパートの一室に入って行った。
駐車場には翔の車ーローレルが止まっていた。
こんな近くにいたとは知らなかった。その側で私はしばらく様子を見ていると、翔の唯一の男の友達が住んでいるらしかった。
その男性には見覚えが実はあった。一度、翔と私が千葉県我孫子市に住んでいた頃に一度会ったことがある。
そのうちにアパートから、若い女性2人が出て来た。なるほど!翔と男友達2人と若い女性2人は、まるで同棲しているかのように仲むつまじい。ここで翔は、彼女らと生活をしていたのか!
これが真実とわかれば、私にとっても都合が良いはずである。今までに何度も翔と別れたいと思って来たわけだからだ。このまま、私は翔たちの生活を黙って見ていないふりをすることもできたはずである。ところが、私の心はやけに落ち着かなくなってしまう。
あの女たちに翔を盗まれてしまったというような錯覚に陥ってしまう。あの女たちから速く翔を返してもらいたいといった心境に変わってしまったのだから呆れてしまう。
夜遅くを狙って、私はアパートに乗り込むことにしたのである。