夜10時になった。私は壊れているお風呂場の扉を開けて、外に出た。父や母や叔母に気付かれてはいないようだった。

 

駅まで徒歩で行く。突然、翔たちのいるアパートの扉を開けた場合覚悟しておく必要があった。もし、翔たちが女性たちとSEXしている最中であったとしても、私はそこで狼狽えてはいけない。とにかく、現実をしっかりと見つめて、対処しなければならない。そこで、もし翔が私よりも一緒にいる女性を選んだ場合でも冷静でなければならない。そういうときは、20歳の大人として潔く別れるべきだろう。

そんな場所で、狼狽えることはしたくなかった。

 

 

20歳の成人式に出席してから、夜学にも行き始めて順調なスタートだったが、翔とたった一度だけ会ってしまったことで私のその後の人生はもはや一歩も後には引けない窮地に立たされてしまったのである。もし、今晩に翔との縁が切れたとしたら、それは私にとって幸福そのものではないか!何もここまで来てまで、翔に固執する必要は何もないのだ。

 

そんな気持ちでアパートの側に到着すると、アパートの扉が開いて翔が外に出て来てしまった!翔は私の姿を見ると、飛び上がらんばかりに私の姿を凝視した。私は半ば微笑みながら、翔に元気?と挨拶をした。すると、翔は私の側で立ち尽くし、涙を流していた。

 

私は何を泣いているの?と翔に問いただすと、「もう!俺が悪かった!だから、もう帰ってほしい」という。そういわれると、反抗的になる私。「何?どうしたのか理由を説明してよ!」と私は翔に言い返していた。私がシミュレーションしていた想像とはまるで違う方角へと進んでしまっている。

 

翔には徹底的に今回の事情を聴こうとしている私がそこにいた。