伊勢丹では、様々な男性たちからランチや飲み会に誘われてはいたが、基本的に同じ紳士服売り場で働く男性たちとしか出掛けては行かなかった。千葉県松戸市の伊勢丹なので、東京出身の私に興味があるというだけで、私は不倫などは一切することもなかった。数カ月間の伊勢丹での仕事も終わりに差し掛かって来た。

送別会も新宿西口のピエロで行われた。

 

 

何故か、支配人はもう少し働かない?と誘ってはくれてはいたが、私の場合はマネキン仲介業者が入っているので、自分勝手に延ばすことはできないのである。

 

支配人は自宅の電話番号を教えてくれて、また仕事をしたいときは電話してと言われていたが、私は絶対に自宅の電話番号は誰にも教えなかった。

 

ちょうど、精神病院から退院した夏子から電話があったりしたので夏子の様子も心配でもあったのだ。久しぶりに夏子に会う約束をしようと考えていたところでもあったので、伊勢丹への未練もそれほど酷くはなく済みそうだった。

 

 

しかも、知り合いの紹介で次の仕事も決まっていた。数日後には東映映画株式会社の総務課に勤めることになっていた。その間までの時間を利用して、夏子の家に行くことにしたのである。