夏子と約束した日に彼女の家に訪ねて行った。

考えてみれば、夏子と会うのは何年ぶりになってしまう。夏子は精神病院に入院したと聴いていたが、話してみるととくに変な様子は伺えないので、正直、ホッとしていた。

 

夏子の友達から、情報は入っていたのである程度のことは知っていた。夏子は一度、精神病院を脱走しているのだ。その足で彼氏と連絡を取って、彼氏のところにしばらくいたというが、夏子の様子がおかしくなって来たので、彼氏と夏子は病院に戻る決心をして再度入院してから、医師の許可が下りたので退院したという。

夏子は私と会うと開口一番「私、精神病院に入院しちゃったのよ!」と言って来た。私は知っていると頷いた。

 

夏子のお父さんは肝臓が悪い状態だったので、病院に入院していた。そんな状態だったので、お母さんは昼と夜の両方とも仕事をしていた。

 

夏子の部屋に入り、色々と話していると夏子の様子は思ったよりも重症であることが理解できた。当時はわからなかったが、シャブをやった後遺症の一種で、当時はシャブによる精神分裂症に罹っていたようである。私と夏子の話が一時的には伝わるのだが、夏子が突然と違う話を想い出してしまい、その話になってしまう。会話のキャッチボールが出来ない状態だったのである。

 

私はそんな夏子を知ると、可哀相で涙が出て来てしまうのだ。

しばらくすると、夏子は自分が現在働いている今で言えばキャパクラのような店に出勤するから、私も1日体験してみて、いいと思えばその店で一緒に働こうと言うのである。

 

夏子は、できれば私の部屋でしばらく一緒に暮らそうとまで言ってくるのである。

私の都合も聴かない夏子の態度は、驚きしかなかった。彼女はひと1倍に相手の都合を聴いてくる人だったから・・・・。

 

とにかく、埼玉県の川口市にある夏子の勤める店で私も働くことになってしまった。私の服装はTシャツにジーパンだったので、夏子にドレスを借りて、電車に乗って店を目指して行った。