翌日、月曜日になると逸る気持ちを抑えながら、会社に出勤した。

幸子さんはすでに出社していて、自分の席に座っていた。

私はお茶汲みの仕事がこれからあるというのに幸子さんに昨日観たお芝居り話で夢中だった。

 

庶務課の先輩に静かにしなさい!と怒られる私だったが、お茶汲みも適当に幸子さんと先輩に任せて、私はひとり悦に入っていた。

幸子さんも先輩もかなり、私に対して呆れた状態ではあつたが、昨日の感動を話さずにはすられなかったのである。

お茶汲み等が終わってから、幸子さんは私に「そういうテンションの高いひとはお芝居に向いているわよ!」と意地悪に言い放った。

 

しかし、幸子さんは意地悪を言ったわけではなく、真実を言ったことがあとになってわかったのである。そんなにお芝居を観て、テンション高くいられる人はお芝居をやってみるとわかると言う。

 

役者として舞台に立ったときにお客さんと舞台の役者たちが感じる一体感は一度感じたものには二度と忘れることができないほどの充実感と自分の存在感を感じると言うのだ。

 

一度舞台に立つなんて機会もあるわけではないので、観客側としてしか感じることはできないと私は幸子さんに言ったのである。すると、幸子さんは私がやる劇団員たちの芝居を文学座の稽古場に観に来ない?と言ってきた。私は開口一番に行けます。行きたいですと答えていた。

 

その後、数日間がして幸子さんから一枚のチケットを渡された。

舞台は文学座の稽古場と書かれていて、ご招待の赤い判子が押してあった。ご招待とは無料だったのである。お芝居が始まる、しかも幸子さんも出演するお芝居を心待ちに待っていた。お芝居が始まる前の稽古がすでに始まっていたらしく、幸子さんは東映はしばらくお休みの日が続いていた。