東映に勤務してから、もうすぐ1年になろうとしていた10月の下旬から11月初めにかけて、幸子さんは文学座の稽古場といったが、正確はアトリエ公演が始まろうとしていた。

 

タイトルは『太郎の屋根に雪降りつむ』

作■別役実 演出■藤原新平というお芝居だった。とにかく、初心者であった私は別役実という劇作家も知らず、もちろん演出される藤原新平さんなども知るはずもなかった。事前に予習をしようと思えばできたはずだが、どうやって調べていいかインターネットもない時代にはとくにこの時期の私にはわからなかった。

 

とくに覚えていることと言えば、舞台には裸電球で天井から吊るされていて、物凄く暗いなかで男性らしき人物が8人~数10人ほど舞台で、独り言のような台詞を言ったあとに急に時代は戦前のクーデターが起きた二・二・六事件に引き戻される。

 

 

1936年昭和2月26日、陸軍の青年将校たち約1500人名を率いて大規模な謀反を起こしクーデターを断行する。しかし、海軍や国軍の力によって謀反は鎮圧される。戒厳令も発令されるが、そのときに起こった様々なことが語られる。

 

 

それとは対照的に舞台では庶民の生活も描かれており。いつ世の中が崩壊するのではないかと怯えている。後にこの革命の青年将校の理論的指導者として逮捕され、軍法会議で死刑判決を受けて刑死する北一輝氏が芝居のなかで登場する。ところが、この芝居では本人はまったくクーデターを望んではいなかったのか?真実はどうなのだろうかがよくわからなかった。とにかく、一種のドタバタ劇を連想するように非常に喧騒があるお芝居だったことが印象的だった。二・二・六事件については当時はまったく理解できなかった。

(参考文献: 別役実『電信柱のある宇宙』白水社1997、別役実『太郎の屋根に雪降りつむ』三一書房1983、二・二・六事件Wikipedia参照)

 

 

 

 

 

ところで、幸子さんはたぶん青年将校たち他だろうが、何処に出演しているのか、まったくわからなかった。しかし、始めて観るお芝居としては難しすぎたようだ!

 

 

 

 

<  余談 >

 

 

『渋谷税務署』(東京都)の角に『二・二六事件』で処刑された青年将校たちや、事件に遭難された方たちを供養するための、慰霊像が建っている。これは、当時を知っている全国の方の募金によって1965年に建立されたものだ。
現在では、青年将校の霊が若者を応援してくれると、恋愛成就スポットにもなっており、若い女性の間で人気である。

(参考文献:二・二・六事件Wikipedia参照・引用)