長かった20歳も終わりを告げる。

私は東映を辞めていた。その理由は、お芝居をやることにしたからだ。新宿区神楽坂にある小さな劇団だが、そこの入団テストを受けて、何とか合格することができたのである。

 

母は賛成してはくれたが、父があまり賛成してはいなかった。その代わり、父を納得させるために私は代々木上原にある東海大学付属望星高校に受かったので、21歳の4月から通学することに決まっていた。もう一度、高校卒業に向かって頑張ってみたいという気持ちがあったからである。

 

全てに対して、新しい出発でもあった。

東映を辞めたのは、幸子さんが急に東映を辞めることになったからである。彼女は文学座を辞めてしまった。お芝居の世界から、足を洗ってしまったのだ。幸子さんには絶大な夢があったという。

 

それは、フランスに留学して語学を習得したら、日本でフランス語の教師になることであった。そのために東映を辞めて、実行に移すことにしていたという。彼女の実家も茨城県で、私が住んでいるところから、とても近いので彼女がフランスに旅立つまで、しばらくは会えるので、嬉しかった。

 

幸子さんも私も新しい時間の始まりとなったのである。