Hidden Enemy45 | The Lilies And Roses

The Lilies And Roses

当ブログはスキップビートの二次小説ブログです。
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自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)

※魔人殿へ 44話を限定に移動させました。
ご確認よろしくお願い致しますm(_ _)m



~Hidden Enemy45~


なかなか夢の世界に入れずに

リックの腕時計をじっと見つめていると

銀色の針が 静かに“カチカチ…”と

優しい音色を刻みながら
俺に語り掛けている様な気がした――…。


“一緒に…これから明るい未来へ進んでいこう”…って――…。



* * *



何故か懐かしく感じる…その温かい音色
に包まれながら、俺は生涯忘れる事ないであろう…今日一日の出来事を思い返し始めた。

――狂ってしまった運命の歯車――…。

あの事故の後からの…ティナの想い――…。

最期にリックが残してくれた“リッキーという新しい命の存在――…。

ティナを影で支え続けてくれた…俺の両親の優しさ――…。

悲しみを乗り越えた後に、“救急救命士”として未来へ進んでいっているティナ――…。


彼女は…俺を恨んでしまった事を謝り…逆に俺が言う筈だった
“許してくれてありがとう…”の言葉を俺に掛けると…

ふんわりと優しく抱き締めてくれた――…。


また…リックの両親も俺の事を心配してくれていて…


“久遠の幸せが…リックの幸せでもあるんだ――…。”


“――おかえり久遠―――…。”

そう言ってそっと抱き締めてくれた――…。


そして…俺自身が他の両親の子供に生まれていた方が…“幸せだったのではないだろうか”…と そこまで思い詰めていた父さん――…。

“過去にどれだけ“七光り”で悩んでも…そんな事 今まで1度も思った事は無い”

“ありえない”…と必死で訴えた――…。

何処の誰の両親よりも…俺は自分の両親が一番だと言い切れる位…本当に尊敬出来る人達だと…今回俺は改めてそう感じた――…。


更に…愛しいキョーコの存在――…。

自分自身の不安を演技で必死に隠しながら…俺の事を…本当に精神的に支えてくれた――…。

キョーコがリックの腕時計の針を再び動かしてくれたから…俺も過去を受け止めて…未来へと向かって進む事が出来たんだと思う――…。


久遠は自分の胸の中で静かに寝息を立てて眠っているキョーコの髪に…そっとキスをした…。

色々な想いが溢れて出て来て…彼女を抱き締める腕に自然と力が入る――…。

………ん………く…ぉん………………………………。すぅすぅ

その瞬間…キョーコは寝言で“久遠”と言い…たとえ夢の中であっても…早速 “さん付け”で呼ばれなかった事に…久遠の口元は緩んだ。

愛し過ぎて…どうにかなってしまいそうなくらいの…熱い愛でキョーコと繋がった状態のまま…久遠はうとうと…とし始めた。

キョーコの…可愛いらしい…すぅすぅ…という寝息を子守唄のように聴きながら――…。



* * *


次の日の明け方…何だか気持ちの良い温もりが 俺の髪をそっと優しく撫でてくれているのに気が付いて…目を覚ました――…。

「あ…起こしちゃった…?…まだ5時過ぎなのに…。ごめんなさい…」

キョーコは俺の髪に触れるのがとても好きで…特に俺が寝ている間によく撫でているらしい――…。

そんな彼女の手を取って…その可愛い指先に…俺はそっとキスを送る。


「…うん……おはようキョーコ……」

「…おはよう…………………。く……くおん…////


昨晩の愛し合っていた瞬間の事を思い出したのか…キョーコは何だか急に顔を紅く染めて…少し恥ずかしそうに俺の事を呼び捨てで呼んでくれた――…。

「………………………………………。」

「…駄目だよキョーコ…寝起きからそんな可愛い顔して俺の事を煽ったら…。」

もう一度愛し合わずにはいられなくなる――…。

普段…これでも君の身体への負担を考えて…もっとしたいと思っても我慢している分…何だか今は歯止めが効かない――…。

「…え……久遠……?ちょっ……ぁ…

耳の裏側辺りをそっと撫でながら舌で優しく刺激を与えると…キョーコは少し感じた様な色っぽい表情で首を捩り…その仕草が更に俺を煽っていく――…。


「…キョーコ…。今は何も考えずに…ただ俺だけを感じていて――…?」

「…どうにかなってしまいそうなんだ…キョーコの事が愛しくて――…。」


夜の帝王の雰囲気の久遠に…愛おしい瞳で見つめられながらそう言われ…キョーコの心臓も壊れてしまいそうな位に速く鳴り響き出した――…。

「………………………。愛してる…キョーコ…………」

そうして…2人の甘い愛の時間は…朝から再びスタートした――…。



* * *


その後…明け方からたっぷりと愛し合った2人は、7時頃…ユリアの様子を見に子供部屋へと向かった。

「ゆりちゃん…?ゆりあ…起きてる…?」

部屋の扉をそっと開けてみると…ユリアはリッキーと一緒に仲良く すぅすぅ…と眠っていた――…。

「あれ…?リッキーと一緒に寝ちゃってたのね…ふふふ…」

キョーコは久遠と顔を合わせながら にこやかに笑った後…そっと2人の頭を撫でた。

「…まぁ…!!何て可愛らしい2人なの……!!」

…同じく子供達の様子が気になって部屋に入って来たジュリエナは優しそうな笑顔でそう言った。

「…あぁ…!!昔の久遠と…リックに本当に良く似ているな――…!!」

「そうね…!クー!! この2人…年は離れているけれど…こうして一緒に眠っている姿は特にソックリだわ…!」

「………………………。へぇ…?そうなの…?」

久遠は少し首を傾げたが、確かに言われてみればそうかもしれないな…とも思った。

ユリアは俺の小さい頃にそっくりで…違うのは髪の長さと薄茶色の瞳ぐらいだし…リッキーも初めて見た瞬間に…リックの息子だとすぐ分かった。

まるで少年時代のリックがそのまま現れたような錯覚をしそうなくらいに…リックとリッキーは瓜2つだ。




そして…子供達を起こして朝食を食べた後…ティナとリッキーも一緒に家族 皆でゆったりとリビングで寛いでいた。

クー達は久遠の家族を受け入れる為に…今日まで仕事をオフにしていた。

また…ユリアとリッキーは出会ったのがまだ昨日なのにも関わらず…
まるで今までずっと一緒に育って来たかの様に仲の良い雰囲気で…遊んでいた――…。

そんなユリアが…不思議そうな顔をしてリッキーから離れて久遠の所へやって来た。

「…ねぇパパーー!」

「ん…?何…?ゆりちゃん」

リッキーと遊んでばかりだった愛しい娘が自分の所に来てくれて…久遠の口元はとても緩んでいた。

「あのねーー?」

「…うん」

「“おぺれーしょん ひかるげんじ”ってなにーー?」

「…………………………………………。」

「………………………。は?!」

久遠の頭の思考回路は一瞬停止した――…。


operation
??

…作戦?!

“光源氏…作戦”…?!



「…ゆりあ……。一体 誰がそんな事を言っていたの…?」

「あのねー?リッキーにぃにが ずっと ボソボソいってるのーー」

「…………………………………………!!」

…それは…もしかして…ユリアを “紫の上”のように…自分好みの恋人として…育てていく“作戦”っていう事…か…??!!

「…それでねー? にぃには ゆりあを “およめさん”にするんだってーー!」

それを横で聞いていたキョーコはにこやかに微笑んでユリアの頭をそっと撫でた。

「へぇぇ…!!ゆりちゃんそんな事言われちゃったのーー!!」

ユリアはコクンと頷いた。本人はまだ3歳なので“お嫁さん”の意味すらほとんど良く分かっていない。



…ちょ…ちょっと待て……!!

ユリアは…まだ3歳だぞ……?!

一生嫁にやるつもりなんか無いのに…!!

もう馬の骨…いや…リッキーだけど……!!


そして…キョーコはゴゴゴゴゴ…という音と共に、怨キョレーダーを感じ取った――…。

「ちょっと……!!く…久遠…??おお落ち着いてーー?!」

おおお怨キョがーー??

キョーコは久し振りの闇の蓮(久遠)さん登場に焦り出した。


「どうしてまだ3歳の愛しい我が娘の嫁入り話が もう出て来ないといけないんだーーー??!!」

久遠が大きな声で怒りながらそう言うと…その言葉を聞いたリッキーは特に怖がる様子も無く…普通に久遠に近付いて来た。

「…クオン…!!ユリアから“お嫁さん”の話 聞いたの…?オレ頑張っていい男になるよ…!!皆に認めてもらえるようにさ…!」

そう言うと…リッキーは朗らかに笑った。度胸があり…目標に向かっていつも真っ直ぐに進んで行こうとする姿まで…リックと良く似ている――…。

「…………………。うわぁーーん…パパがこわいーー!!」

そして…逆に初めて見た父親の怖い態度にユリアは驚いて泣き出し…その様子を感じ取ったリッキーは、キョーコよりも先にユリアを優しく抱き締めた。

「…大丈夫…ユリア…?よしよし――…。」

「うぅ……にぃにーー!!」

リッキーの優しい態度にユリアは安心して身を任せ…そして…愛しい娘に自分の存在が“怖い”と泣かれた久遠はショックを受けた。

何とか必死に怒りを隠して笑顔を作ってユリアに話掛ける。

「…ゆりちゃん…?怖がらせてごめんね…?もうパパ怒ってないから…だからリッキーじゃなくて…パパの所へおいで……?」

しかし…その顔はキョーコも昔よく怖がっていた似非紳士スマイルであった為…ユリアは怖がったまま近寄ろうとはしなかった。

「いやややぁぁーーーーー!!」

それどころか益々怖がったユリアはリッキーにしがみ付き…

また 自分の笑顔を怖がられてイヤと言われ…リッキーに助けを求めた愛しい我が娘の態度に久遠は本気で凹み始めた。




「「………………………。ふっ…ふふふ…っ…!」」

「くっ…くっく…はははーーーー!!!」

その様子を見ていた大人達は久遠の凹み具合が可笑しくなって思わず笑い出した。

「…いいじゃないか久遠……。この2人…なかなかお似合いのカップルになるかもしれないぞ…?」

「今はまだ年の差をとても感じるが…ユリアが18歳の時にリッキーは27歳。長い目で見守ってやれば問題ないんじゃないのか――…?」

そして…クーのその言葉を聞いたリッキーは嬉しそうな笑顔を見せた。

「さすがクー!!そうだよ…!オレもちゃんと色々と計算して考えたんだよ…!それに…クーみたいにずっと一途に大切な人を想える自信あるし…!!」

そう言いながら…リッキーは心の中で“ユリアは将来ジュリのような凄い美人になる事間違いないし…”と考えていた。したたかな策士である。

更に…お姫様などお伽話が大好きなキョーコの心までリッキーは見事に掴んでしまった。

「ゆりちゃん…!!3歳にしてもう王子様が現れるなんて…!!これからリッキーにぃにが ゆりちゃんの事を守ってくれるのね…!」

キョーコが瞳をキラキラさせながら喜んでいる姿を見たティナも…リッキーをこれから見守っていきそうな雰囲気である。

「…まさか…3歳にしてこんな状態とは……。これから先…一体どんな馬の骨が出て来るんだ…??」


凹んだままの久遠はぶつぶつ言いながらこの先の事を考え始め…キョーコはそんな彼の手を優しく握りながら口を開いた。

「だから…リッキーに守ってもらえばいいのよ…!それに…彼以上にゆりあに相応しい王子様なんて…いないんじゃない…?」

「……………………………………。」

キョーコのその言葉を聞いた瞬間…ユリアが身に着けているリックの形見の髪飾りが俺の視界に入った――…。

リックが自分の娘に…と最期に残していった
その可愛いハートの形の髪飾りは…ユリアにとても良く似合っている。

「……………………………………。」

…確かに…冷静になってちゃんと考えてみれば…キョーコの言う通りかもしれないな――…。

もし…将来2人が結婚したら…ユリアは本当に“リックの娘”にもなるのか――…。

そして…更に2人の間に子供が出来たら…俺とリック…両方の“孫”――…?

………………………。どう思うリック――…?




久遠は…色々と考え…リックに語り掛けた後に、ふぅ~と大きく深呼吸をして…キョーコの顔を見ながら呟いた。

「まぁ…それも…ありかもしれない…かな――…。」

「本当ーー?クオン?!オレの事もう認めてくれたのーー??」

リッキーは嬉しそうに久遠に笑いかけた。その表情まで…本当に良くリックに似ていて…まるでリックが笑っているのではないかと錯覚しそうになる――…。

「………………あぁ……。認めてもいい……。」


――だけど後30年先の話だ…ッ!!


「うわぁぁーーーーん!!!」

久遠は無意識に怖い顔をしてしまい…折角 落ち着き掛けていたユリアを再び怖がらせてしまった。

「…あっ…ユリア……!怖かったね…大丈夫だよ…にぃにが守ってあげるから――…。」

その日の午前中…ユリアは機嫌が直るまで久遠にあまり近寄ろうとはせずにリッキーにベッタリとくっ付いて過ごし…

久遠はもう娘が嫁に行ってしまったような寂しい感覚を味わう事になり…キョーコは笑いながら彼を慰めた――…。

そして…午後からは機嫌の直ったユリアを久遠はずっと抱っこしたまま構い倒してお姫様のように扱っていた。



…リック……。

何だか…将来…俺達の子供は

本当に結婚しそうな気がして来たよ―――…。



久遠は夜にリックの部屋に行き…そう彼に語り掛けた。


「そして…明日から俺の夢だったハリウッド映画の撮影がいよいよ始まるんだ――…。」

「……………。天国から応援していてくれ…リック――…。」

久遠はリックの形見の腕時計をそっと右手で掴んで暫く目を閉じて深呼吸をした――…。



* * *



その後…ハリウッドデビューをした久遠は、最初は親の七光などと言われたものの…何作か出演していくうちに演技の実力で周囲から認められる俳優になっていった。

また…子育てが一段落したキョーコも後から遅れてデビューを果たし、それから数年後に2人は共演という大きな夢も叶えた――…。

(しかし…キョーコには馬の骨が次から次に現れ、鈍感な彼女の影で久遠はかなりの苦労をした。)




そして…リッキーは宣言通りひたすら一途にユリアだけを愛し続け…彼女が19歳の時に妊娠が発覚、2人はめでたく結婚をした。

久遠は“早過ぎる”とリッキーに対して怒ってはみたものの…心の中では新しい命の誕生に喜びで溢れていた――…。

2人の間に生まれた赤ちゃんは元気な男の子で、“リオン”と名付けられ

明るめの茶髪に薄茶色の瞳をしたその子は…久遠とリック…両方に似た雰囲気を持っていた――…。


* * *


リックの墓の前で


久遠はリオンを抱いたまま…

静かにリックに語り掛けた――…。



「…リック……。見て…リオンだよ――…。俺とお前に似てるだろう…?」

「………………………。お前の生きた証は…しっかりと受け継がれていってる――…。」

「そして…これからは俺の…生きた証と一緒に…未来へと続いていくんだ――…。それって…凄い事だよな…リック――…。」

久遠は…穏やかな表情で静かに微笑んだ――…。

その瞬間

「あー!あーー!!きゃはっ!!」

リオンは嬉しそうに…何もない所に向かって指差しをしながら笑い出し…

春の暖かい風が2人を包み込むように吹き、花びらがはらはらと舞い上がった――…。

「………………………。リック…今…そこにいるのか…?」



…リック……。

いつか…俺の命が尽きたら…

その時は たくさん語り合おう――…。

今は…俺がお前の分まで家族を守るから――…。


【完】




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全45話までお付き合い頂きありがとうございました。m(_ _)m Layla