おっちょこちょい。
夏、強引な手法を用いて残業を切り上げた私は、彼女の待つ本屋へと急いだ。
その日は二人で浴衣に身を包み、花火を見る約束をしていたからだ。
彼女の姉の家で浴衣に着替えた。
浴衣姿の彼女を見てニコニコした。
浴衣を着た彼女と、浴衣を着た私は、手をつないで『カランコロン』と下駄を鳴らして歩いた。
遠くに見える花火を見て、また『カランコロン』と下駄を鳴らして彼女の姉の家に帰った。
二人で手を繋いで家に帰った。
花火を見終わって、浴衣を着替えて、チャリンコに跨って近所のファミリーレストランまで出掛けて食事を済ませた。
その日は彼女の姉の家に泊まる事になった。
彼女は私の手を引いて『一緒に寝よ。』と言った。
私は『うん。』と言って、彼女と一緒にベッドで寝転んだ。
しばらくして彼女が眠ったのを確認してからタバコを吸う為にベッドを離れた。
夜中に彼女の姉が帰宅した。
花火を見る前に、ほんの少し話をしただけだったので、あらためて挨拶をした。
それから彼女の姉としばらく会話をした。
朝、ソファーの下で眠る私の横に、『寝ぼけ眼』の彼女が『ペタペタ』と歩いてきた。
彼女は私のそばで添い寝しようとし、私のそばにあるテーブルを移動させた。
その時、テーブルの上の灰皿が私の前に落ちてきた。
彼女が眠ろうとした場所はタバコの灰で散らかった。
彼女は手をバタバタさせて『あわわわわ。』と言って、アワアワした。
少し落ち着いた彼女が掃除機を持ってきてコンセントを差し込もうとした瞬間、立てていた掃除機が、『姉の飼っているカメ』を入れた大きな皿に直撃した。
『ガンッ!!』
大きな皿に掃除機が直撃した。
その時に発生した大きな音に彼女は驚いて、小さな体で手足をバタバタさせ『あわわわわ。』と言いながら、アワアワした。
私は『くすくす』と笑いながら掃除機を起こした。
それから二人でタバコの灰を片付けて、ソファーの横で彼女と添い寝した。
何気ない幸せだった。
この夏、私が見たもの。
花火。
彼女の浴衣姿。
おっちょこちょい。
どれも全部好きだけど『おっちょこちょい』が一番好きだ。