駅。



電車を待っているボクの隣には“クリクリ天然パーマ”が腰掛けていた。全く知らない人。極上な“クリクリ天然パーマ”と微妙な“冴えないフェイス”と悲惨な“ちょいムチムチなバディ”を装備した彼は小さな声で“ブツブツ”と呪文のように何かを呟いていた。



ゴンッ!!!!!



突然に彼の拳が唸りをあげた。彼がベンチに腰掛けながら壁に裏拳をしたのだ。キモイ。彼が何に対してご立腹なのか知らない。知りたくもない。ただ、純粋にキモイ。純粋にキモイ彼が間髪入れずに手をさすった。予想外な激痛に驚きと戸惑いを隠せないこと山の如しの彼をボクは見逃さなかった。裏拳の右手をさする彼の左手は止まらない。キモすぎる。キモすぎるままの彼を無視して電車は予定時刻に到着した。乗車してからも彼の手は止まらない。“右手”が“ポコチン”だったら射精していることは明確な“さすり具合”だ。しかも裏拳した右手は微かに流血し、明らかに腫れている。吉田栄作クラスのトレンディ具合だ。トレンディはブツブツ言いながら隣駅で下車した。このまま追尾したい気分だが残念なことに仕事に向かう途中だったので断念した。

大阪駅に到着して職場へ向かう途中、“バイト先ではリーダーやってます”風な男が携帯電話片手に『今日の俺は、すこぶる怒ってるんや!』と大声で喋りキモイオーラを散布しながら歩いていた。ついつい心の中で『すこぶるってオイ!!』と関西人してしまった。本日2人目の“キモイ君”だった。変なヤツがあちこちに棲息する“にっぽん”は平和だと思った。



昔、職場に荷物を運んできていたトラック運転手のオジサマが『最近の若いヤツは辛抱ができよらん!!ホンマに、どいつも、こいつも、フランスも!!』と口癖のように言っていた気持ちがわかる雨模様の夜を職場で過ごした…。