【地図マニア】



現場にはいつもオートバイで通っていた。

朝寝坊もしたいし、なるべくゆっくり出たいゼ。

その為には最短距離で突っ走れ!

地図を見て、どのルートがいいかと探すのが好きだ。

ナビなんかにまかせてちゃ、もったいない。

こんな所にこんな道が!見つけた時のワクワク感がたまらない。




東京に出てきた瞬間からよく歩き回った。

この未知なる大都会を、一歩一歩浸食するような感覚だった。

そして頭の中にどんどん地図ができあがってくると、

いつも間にか、それが快感になっていた。




ナビもいいところはある。

だが、完全に頭脳をナビに預けている運転手を見ると恐ろしくなるゼ。

そいつの野生の勘は死滅寸前だ。

文明の発達とは、人間から本来ある能力をどんどん奪う事だ。

その事に気づくのだ。

誰にでも必ずイレギュラーは来る。

その時こそ、かっこつける大事な場面の到来さ。

野生の勘でイレギャラ-を難なくかわし、片目でウインクして

颯爽と走り抜けよう。




もちろん海外でも、地図を見る事が好きだ。

スタッフのドライバーがいるから、特に困りはしないが

オレは街を正確に捉えたい願望が強い。

そして把握した上でロックンロール!

それに、万回か千回に一度訪れるかもしれない危機から

回避出来る事だってあるかもしれない。

ある時、セーヌ川の畔を歩いていたとしよう。

するといきなり美女がオレにぶつかってきた。

なんだこの野郎と思ったが、どうも美女は悪の手先から逃げているようだ。

オレはすかさず彼女の手を取り路地から路地へ消え、追っ手を巻く。

するとその美女は某国のプリンセスだった。

お名前だけでもと聞かれるが、当然の事をしただけですからと

立ち去ろうとするが、そのプリンセスは許さない。

するとあれよあれよという間にその国の王となり、そして幸せに~

いやいやそれだけは辞退しなければ。