【SHEENA IS PUNK ROCKER】
下北沢で待ち合わせのバーガー屋に入ると
先に来ていたドラムのナリちゃんがある席を指して言った。
「今までそこにロックが座っておられました」
「エッ!?」と聞くと、
ついさっきまで、シーナ&ザ・ロケッツのシーナさんが
子供と一緒に座っていたらしい。
有名人にそんなに反応する方ではない。
ましてやロッカーなら、自分がかっこいいと思わなけりゃあ
歯牙にもかけない。
だが、シーナ&ザ・ロケッツなら話は違う。
掛け値無しの本物のロックンロール!
さぞかしロックの匂いがプンプンその辺りに漂っていたに違いない。
ギターウルフを結成してまもなくの頃だった。
ギターもまだまともに弾けず、
自分達のロックが確立されてなく、曲もなく
何をどう爆発させればいいのかさっぱりわからなかった。
1990年、遂にザ・クランプスが初来日した。
ギターのポイズンアイビーに凄まじい衝撃を受けた。
赤いビキニで、魔女のようにギターを弾く様子にオレの目は釘付けだ。
自分達の曲でレッドロカビリーという曲があるが、
それは、この時のポイズンアイビーにインスパイヤーされてできた。
その公演終了後だ、ホールを出たところで一人の派手な女ロッカーを
見かけた。
シーナさんだ、横には鮎川さんがいた。
彼女の黒々しく獅子のような豪毛が、フロアーに盛り上がり、
それが赤い髪のポイズンと対照的で、
「ああそうだ!日本にはこの人がいる」
その時そんな風に思った。
彼女は、ニューヨーク、ロンドン辺りの不良パンクと渡り合える
日本人唯一の女性ヴォーカルだった。