【おもちゃ箱の決闘】
近くの小学校が入学式だった。
自分にとって小一は、とてつもなくでっかいステップだったように思う。
入ってまもなく、友達と殴り合いのケンカをした。
その友達とは幼稚園が一緒で幼稚園の頃からよく遊んでいた。
だが彼は少し横暴で、自分はいつも彼の言いなりになるところがあった。
小一になったある日、自分の家のおもちゃ箱で彼と遊んでいた。
その時オレは、忽然と怒りを表している。
原因は忘れた。
小一は直線のパンチなどではない。
よく子供のケンカで描かれる両腕を振り回す、ぐるぐるパンチで
向かっていった。
彼の背後には自分のおもちゃ箱があり、彼は1,2歩後退した。
そこで彼をかろうじて圧倒した事が、自分の何かを変えた。
どうもあの瞬間が人生最大の岐路だった気がする。
彼はそれから二度と家に遊びに来なくなったが、
ある日、道で柔道着を持った彼に会って少しドキっとした。
「柔道始めたの?」の問いに、恥ずかしそうにニコッと笑った。
それっきり彼とは会っていない。
彼の事を少し横暴と書いたが、それは違う。
自分の何かが目覚めてなかっただけだ。
母親は今でも彼の事を憶えていて、すごく素直でいい子だったと
教えてくれた。
近くの小学校が入学式だった。
大人達には見えない何かでっかいステップを、
彼らは上がろうとしている。