かつては、商標権が消滅した場合、それから一年は、他人は、その商標権が存続していた場合にかぶる範囲で商標登録を受けることができないようになっておりましたが、平成23年の法改正により、そのような規定が廃止されました。


 しかし、それは、もともとの商標権者の放棄等により権利が消滅した場合であって、存続期間満了により消滅した場合は、実質的に上記の規定は生きているので、お気を付けください。


 というのも、商標権は更新可能であり、更新したい場合には原則として権利満了日までに更新料を払う必要があります。しかし、その期間を見過ごしてしまった場合に、更新料の倍額を払えば消滅後6か月以内なら、更新を行うことが可能になります。また、天災事変等により、その期間にも更新できなかった場合には、さらに最大で6か月の救済期間があります。

 つまり、存続期間満了から1年は商標権が更新される可能性があり、これとかぶる出願は、それを待って登録されることになります。


 多少、時間がかかっても登録されればよい場合であれば、そんなに弊害はないでしょう。

 しかし、事業を早めに進めたく、そんなに待ってられないということもあると思います。その場合には、もともとの商標権者に事情を話して放棄してもらう等といった方法が考えられます。また、その権利者が(権利期間内に)更新をしていないのであれば、長期に亘って使用していない可能性もあり、不使用期間が3年を超えているのであれば、不使用取消審判をかけるというやり方もあります。

 とはいえ、自分が商標登録を受けようとしていることを、もともとの商標権者に知られたくないということも少なくないと思います。その場合は、例えば、出願している態様に、自分の会社の名前をくっつける等して、もともとの登録商標とは非類似といえるような態様で使い、上述の登録可能な時期になったら、もともと想定した態様に戻して使うというのが一つの手かと思われます。

 さらに、より安全のためには、そのくっつけた態様で出願をしておくということがよいでしょう。

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