もう半月以上経ってしまいましたが、私の所属している、主に月一の例会と、そのための運営会議等を行う幹事会とからなるビジネス交流会(B○Iではありません)の幹事会において、知財に関するプチセミナーを行いました。


 普段、知財など無縁と思っている人が多いと感じられることから、おそらく話しても食いつきは悪いだろうと予測していたのですが、意外にも多くの質問が出て、この交流会のメンバーの意識の高さを感じさせられました。

 その中で、特許出願は自分で書いて出してもよいのかという質問も受けました。

 あくまで○理士や○護士というのは代理人であり、出願人本人が出すことは法律的に何ら問題ありません。


 しかし、質問された方に悪意はないでしょうが、この内容の質問は正直言って、気分のいいものではありません。

 一つには代理人費用をケチりたくて、こう考える方がいることにあるのですが、上記の交流会メンバーのような意識の高い人達ですと、そういう考えは少ないと思います。

 おそらく質問者の意図は、代理人に頼らずに自分で書類を作成する気概を持たなければということで、仮に費用を削減したいという考えがあるとしても、その費用を従業員の賃金や設備投資等に回したいということでしょう。とはいえ、それでも、あまり、良からぬ考えに感じます。


 御存知の方も少なくないと思いますが、特許出願の書類は、一般(大企業の知財や開発にいて慣れている方を除けば)の方にとっては、難解極まり余程の天才でもない限り、初めて接するとしたら、記載要件をクリアするだけでも非常に困難だと思います。

 また、記載要件をクリアできても不必要に発明を限定してしまったり、記載内容が薄かったりで、ハッキリ言ってアイデアの開示に終わってしまい、出すだけ無駄に等しい内容の書類となってしまうと思います。

 確かに自分で書けば代理人費用は抑えられるでしょうが、特許にするには、特許庁に支払う費用だけで15万円程度は必要になりますから、その費用が無駄になってしまいます。

 しかも、慣れてなければ、その作成に膨大な時間を書けることになるでしょうから、その間に経営なり開発なりの本来業務がストップすることになってしまい、却って会社にとって損失となってしまいます。

 結果として、本人は良かれと思っていることが仇となってしまうことになります。


 また、こう言う自分でやろうという考えの根底には、代理人業務というのが労力の割に高い料金を取る虚業であるとの偏見があるように思います。


 代理人業務を軽視する国に未来はないように思います。アメリカだってヨーロッパだって代理人業務は重要なものと認識されていますし、日本より遥かに高い費用がかかりますが、社会はそれを違和感なく受け入れています。


 おそらく、嫉妬心からでなく代理人業務=虚業と考えている人は、お金というのは汗水流して働いてこそ得るものだという、一見もっともな考えから来ているのでしょうが、それが結果として国を滅ぼすことになってしまうということに気付くべきだと思います。

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