先日、あるクライアントの商標登録出願について、出願日から3カ月半足らずで登録査定が届きました。これまでだと、早くても5ヶ月近くはかかっていたので少し驚きました。

 さて、自分としては、5ヶ月であっても、かつての1年や1年半もかかっていたらしい時代のことを考えると早いなと思いますが、出願が初めてという方だと、「そんなにかかるのか」という印象を受けることが少なくないようです。

 実際に、当初は他の同業の方に依頼していたものの、どうもその代理人の方が、出願から査定が出るまでに、その程度の期間がかかることを話していなかったようで、それだけが原因ではないでしょうが、不安になって自分のところにスイッチングして来たというケースもありました。


 ということで、なぜ出願から登録査定までに、その程度の時間がかかるのか説明してみたいと思います。


 まず、商標登録出願をすると、1か月半か2か月ぐらいで、その内容が公報により公開されます。では、なぜこの公報の発行に、その程度の時間が必要になるかということですが、商標登録出願は年間に約10万件あります。しかも、おそらくは公報発行の事務作業をしている部署は、商標だけでなく、他の公報の発行作業も兼ねていると思われます。

 とすると、どうしても、その程度の期間は、かかってしまうことは理解できると思います。


 では、なぜ出願内容を公開する必要があるのかということになりますが、これは第三者に情報提供の機会を提供する目的もあるのです。

 情報提供というのは、出願内容が、何らかの拒絶理由(登録査定を出すべきでない理由)を知らせるということです。

 この期間が、出願から公報発行までの期間より少なくては、情報提供がしにくいでしょうから、どうしても2か月程度は必要になります。

 で、問題ないとして査定を出す際に、特許庁も組織ですから決裁を仰ぐ必要がある。そうすると、最低でも合わせて4か月強はかかってしまうことになるのです。


 あと、この話を聞いたときは、単なるレトリックにすぎないと思っていたのですが、実際に潜在的に、そういう認識があるようなので、書きたいことがあります。

 それは、あくまで「出願」であって「申請」ではないということです。


 何を申したいかというと、「申請」というと方式さえ問題なければ、事務作業だけで通るものというイメージに捉えられがちですが、商標登録出願(特許出願もそうですが)は、登録査定が出て商標権が発生すれば、それは独占排他権として他者の使用を排除できる極めて強い権利となるため、どうしても、その審査には慎重を期す必要があるのです。


 是非、御留意ください。

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