商標が登録できるかは、大雑把には、その商標に識別力があるか(たとえば、ブドウ入りのパンに「ぶどうパン」と言う商標を出願しても登録NG)と、既に似たような商標が登録されていないかで判断されます。

 

ただし、商標が登録されれば、その権利者は独占使用が可能となるので、私人が独占することが相応しくない商標も登録を受けることができないようになっています(商標法第4条参照)。

 

たとえば、国旗、菊花紋章、勲章、褒章または外国の国旗と同一または類似の商標は商標登録を受けることができないとされています(商標法第4条第1項第1号)。

しかし、この中には、戦国武将の家紋等は含まれておりません。

 

ここで、他人の肖像または他人の氏名等もしくは著名な雅号、芸名もしくは筆名もしくはこれらの著名な略章を含む商標についても商標登録を受けることができないとされています(商標法第4条第1項第8号)。

とは言え、家紋は、氏名等や雅号等、ここに挙がっているいずれにも該当しません。

 

他にも、たとえば、他人の周知商標と同一または類似の商標で同一または類似の商品もしくはサービスに使用するものも商標登録できないようになっているのですが(商標法第4条第1項第10号)、ここには「他人の業務に係る」とあり、家紋が業務になるのか微妙なところです。

 

そうすると、家紋について明確に商標登録を排除する規定はないことになります。

実際に、商標登録を受けている例もあるようです。

http://www.asahi.com/articles/ASK323TMQK32UJHB00L.html

http://pleasure-bit.com/1122.html

https://twitter.com/haru01xx/status/242979807476977665

 

そうすると、町おこしのときに、その町の象徴みたいになっているのに、当地の戦国武将の家紋が使えなくなってしまうではないかと懸念が生じることにもなり得ます。

 

しかし、あくまで私の個人的な考えとしては、あまり心配に及ばないと考えております。

 

まず、商標登録を受けるためには、使いたい商品やサービスを指定して出願をすることになりますから、その商品やサービス以外であれば、問題になりません。

 

一方で、指定された商品やサービスとなると、事情が異なって来ます。

たとえば、指定された商品やその包装に商標を付すると商標の使用になり(商標法第2条3項1号)、文言上は商標権の侵害になり得てしまいます。

 

とは言え、ここで、商標は、業務における信用を維持するために保護価値が認められています(商標法第1条)。

ここで、町おこしでグッズ等に当地の戦国武将の家紋を付してイベントをするときに、その家紋が誰かの業務を行うための目印であるとは、認識されないでしょう。

もっとも、戦国武将の末裔が生きていて、その人が家紋を用いて業務を続けていれば別でしょうが、そういった話もあまり聞きません。

 

そうすると、この行為は、家紋を商標として使ったとは言えないと思います。

また、平成26年の法改正において、いわゆる商標的態様での使用でない場合を、商標権の効力が及ばない範囲として規定しています(商標法第26条1項6号)。

http://management-legalip.blog.jp/archives/29174864.html

 

こうしたことより、仮に家紋に商標登録がされてしまっていたとしても、普通に町おこしで使う分には、商標権の侵害とはならないでしょう。