いつも思い出す人がいる。

それは、わたしが未破裂脳動脈瘤で検査入院したときに

同室にいらっしゃった、ご婦人です。


脳という特殊な場所の検査入院、心細くて不安で仕方なかった私の心を

察して、声をかけてくれたのが、この方でした。


わたしが、自分の手術方法についてあれこれ悩んでいること、

手術について不安に思っていることを告げると、

自身は癌の転移があり、延命治療のために入院していると言われていました。


ただ、そっと笑顔で自身の話をしてくれました。

こうした方がいいよ、ああした方がいいよ、とは一言も言われませんでしたが、

わたしの不安をとってくれようとしていた気持ちがじんわり伝わってきました。


検査入院のため、翌日には退院。

退院するときに、とにかく御礼を言いたくて、ありがとうございました、

とだけ告げて部屋を後にしました。


それから日が経ち、今でも

ふとしたときに、あのご婦人を思い出すのです。


わたしは延命治療のために入院しているのよ。。。

その言葉は、命をつなげるための手術と、生きるための手術の違いを

教えてくれていたのではないか、と思っています。


生きるための手術なのだから、頑張って!

そう言ってくれてたのではないかと。

辛いことはたくさんある、でも、生きるために手術ができることは幸せなのだと、

そう教えてくれたような気がするのです。


わたしは、ずっとそのご婦人のことは忘れないですし、

これから手術をしようとする人がいたら、

この話をしようと思います。

命は限りあるもの。

普通に生きているときは気づかずに過ごしている。

わたしたちは、なにか宿題をもらっているのかもしれません。