立ち聞きの敦賀 の続きです。
いかがわしくは、ありません。
ヘンタイでも、ありません。
∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
…………見て、しまった……。
某部室にて。
その日、20時にキョーコちゃんと待ち合わせしてた俺は、時間通りに部室へと向かった。
「あれ?」
目の前を歩いているのは、俺の担当俳優である敦賀蓮。
さっき、駐車場で別れたはずなのに?
最近、ずっと機嫌も体調も凄く悪そうで、早く帰るように言ったのに。
ここ数日、闇の国のお友だちをたくさん背中に背負ってて、怖いんだよな。
まぁ、仕事はちゃんとこなしているけど……。
自分と進行方向が同じらしく、自然と蓮についていく形になった。
どうやら自分と蓮は目的地も同じだったらしい。
蓮がノックをすると、キョーコちゃんが出迎える。
「社さん!お待ちしてました!……あっ……」
待ち合わせしていたため、キョーコちゃんが俺と間違えて出迎える。
(……ヤバい)
蓮の後ろにとっても黒いモノが見える。
キョーコちゃんも感じとったらしく、真っ青な顔をしている。
蓮がキュラッキュラの笑顔で部室へ入って行くのを見て、俺は慌てて部室の前まで行く。
蓮も動揺しているのか、扉が完全に閉まっていない。
タイミングを見計らうために、扉の隙間から様子を伺う。
「……っ!!!?」
まままままさかっっ!!
蓮がキョーコちゃんを抱きしめている!
蓮の腕のなかでキョーコちゃんが暴れている。
蓮は扉を背にしているし、キョーコちゃんは蓮の体に隠れて見えないけど……もしかすると……キ……ス……してる……?
蓮!!無理矢理はダメだ!無理矢理はダメだ~!!
「……なんで……ですか?」
「社さんと、付き合っているの?いつから、好きなの?もう、恋なんてしないんじゃなかったの?……社さんが相手じゃ俺、かなわないよ!」
はあぁっ!!?
なっ……なっ……!
「聞いたんだ。最上さんが琴南さんや社さんと話しているところを……好きだって。理想の旦那様だって……社さんも最上さんに大好きだって言ってた。今日も、ここで会うんだろう?」
そ、それって……
「敦賀さん……あの……」
「……ごめん。君の気持ちを無視してこんなことをして……。
油断してたんだ。君はまだ、恋なんてしない。誰のものにもならないって。どんな馬の骨でも牽制して、君に近づけないようにできるって……。
でも、社さんは別だ。大人で穏やかで、仕事も出来るし、君からも慕われていて。それに、俺が最も信頼している人だから……」
蓮……、俺のこと、そんな風に思っていたのか。
「でも、いくら社さんでも譲れないんだ。君のことだけは……。ずっと、好きなんだ。後輩としてじゃなくて……俺は……君の恋人になりたい」
……っ!!
蓮!よく言った!!
「…………社さんとは、お付き合いしてません。これからも、することはありませんよ」
それまで蓮の腕の中でじっとしていたキョーコちゃんが、蓮の背中に腕をまわした。
「……えっ?」
「社さんと待ち合わせていた用事はコレです」
あっ……、みっ見せちゃうの?
キョーコちゃんは鞄の中から、それはそれはリアルな仔犬の人形を取り出した。
…………っかわいいっ!!
「実は……これを完成させるために、社さんからアドバイスをいただいていたんです。
社さん、ご自宅でワンちゃんが飼えないって仰ってたので、せめて人形でもって思って日頃のお礼に作らせていただいたんです」
あわわっ。恥ずかしいっ!
「えっ……でも琴南さんと、社さんのこと理想の旦那様って。告白するって……」
「あっ……その、それはっ……あの……」
「やっぱり社さんと……」
「違います!!…………私とモー子さん、社さんのことが好きなある人から、その事で相談されてて。モー子さんと話していたのはそのことなんです」
「俺には秘密だって……」
「あのお人形、やっぱり男の人としてはちょっと恥ずかしいらしくて……」
「じゃあ、最上さんと社さんは付き合ってない?」
「はい。わ、私は……敦賀さんが好き……です、から…………きゃあっ!!」
蓮がまたキョーコちゃんを抱きしめたと思ったら、ソファに押し倒した。
れ、蓮?!ちょっと展開、早すぎないか?
落ちつけ!!…………あれ?
「つ、敦賀さん?大丈夫ですか!?」
「ごめん。安心したら気が抜けて……。最近、眠れなかったから」
「あ、あの……私の膝でよかったらお貸ししますが……」
「……っっ!!お、お願い……します……」
押し倒したんじゃなくて、倒れこんだのか。
蓮……、抱かれたい男No.1の称号も形無しだな。
キョーコちゃん、ありがとう!そして、これからも蓮を宜しくお願いします。
かわいい弟と妹の幸せそうな姿を、涙でボヤけてよく見えないよ。
俺はそっと扉を閉めて、暫く見張り役を務めた。
…………どうでもいいけど、二人とも20時の俺との約束、忘れてるよね。いいけどね。
∞∞∞∞***∞∞∞∞
自分で言うのも何ですが、こんなに長いこと覗いてて、よくバレなかったですね。
はじめて長く文章書いた結果がこれでした。
……公開直後、ちょっと訂正しましたっ
矛盾点がありまして……。