立ち聞きの敦賀・覗きの社のおまけ的なやつです。



最近、親友に彼氏ができた。
その彼氏は芸能界一のいい男。抱かれたい男No.1俳優様。
女性に対してもスマートで紳士的。
でも、実際は…………。


某テレビ局楽屋にて。

『敦賀 蓮様』

ドラマの収録が終わり、移動しようとテレビ局の廊下を歩いていると、先輩俳優の名前を見つけた。
親友の彼氏でもあるけど、先輩で所属事務所の看板俳優。

(見て見ぬフリはできないわよね)

コンコン
「おはようございます。琴南です」

ノックをすると、マネージャーの社さんが扉を開けてくれた。

「失礼します。敦賀さん。ドラマの収録でこちらに来ていたのですが、敦賀さんのお名前を見かけたので、ごあいさつに伺いました。
この度は…………無事……キョーコとお付き合いをはじめたそうで…………ぶふっ」

迎えてくれたときの笑顔から一転、敦賀さんの顔が強張った。
逆に社さんは目を三日月のような形にして、私と同様に笑いを堪えている。

「ぶっ…………琴南さん、キョーコちゃんから聞いたの?」
「はい……ぷっ……敦賀さんが、キョーコと社さんの仲を疑って眠れなかったこととか……」
「キョーコちゃんからの告白に、膝から崩れ落ちたとか……ぐふっ」
「えぇ。おかげで膝枕までしてもらったり……ククッ」
「ぜ~んぶ、知ってるんだ…………ひぃっ」
「!!??」

恥ずかしがっているのか、なかなか話さないキョーコから、『秘技!親友やめる!』を使って無理矢理聞き出した情報。
確かに敦賀さんのイメージ的にも人には言えないわね。

ちょっとイジリすぎたかしらっ?
敦賀さんの後ろに黒いモノが見えてきたわ。

「や、闇の国の蓮さんがっ……!!」

社さんが、なんだか可笑しなことを言っているわ。お疲れかしら?

「社さん、俺……社さんが覗いてた事実。まだ完全に納得してませんから」
「ひいぃっ……だ、だからお詫びにキョーコちゃんとの1日完全オフを作っただろう!?」
「……せめて、2日がよかったです」
「お、俺の胃に穴を開ける気か!!」

珍しい。拗ねてる敦賀さんなんて、なかなかお目にかかれないわ。
私はスマホの画面を敦賀さんに見せた。
それは最近話題のスイーツショップのケーキの画像。
ケーキの上にはバラと妖精のデコレーション。

「このケーキ、凄く可愛いと思いませんか?この前キョーコと雑誌を見ている時に見つけたんですけど、あの子すっごく目を輝かせて見ていましたよ。プレゼントしたら喜ぶんじゃないですか?」
「……!!」

本当にあの子のことになると余裕ないのね。
あの『敦賀 蓮』がねぇ。
あら、社さんたら笑いを堪えて息が止まりそうだわ。

「教えてくれてありがとう琴南さん。……そのイヤリング、とても似合っているね」

社さんをひと睨みして、気を取り直した敦賀さんは私が耳に着けているイヤリングを見て誉めてくれた。
(さすが、フェミニスト)

「ありがとうございます。キョーコが、大好きな私とお揃いのアクセサリーが欲しいって言うので、一緒に買ったんです」
「っ!!?」
「…………ぶふぅーーーっ!!」

遂に社さんが堪え切れなくなって吹き出した。

「それでは、次がありますので失礼します」

固まる敦賀さんと転がる社さんに挨拶をして、私は楽屋から退室した。
(ちょっと意地悪しすぎたかしら?)

私の親友を手に入れたんだから、少しくらいの意地悪はいいわよね。

少しの寂しさと、キョーコの幸せそうな顔を思い出しながらテレビ局を後にした。




∞∞∞∞***∞∞∞∞

敦賀さんとキョーコちゃんをイジれるのは彼女くらいと思っています。
敦賀さんとモー子さんは、キョーコちゃんを巡ってライバルかな?

そして、また社さんが可哀想なことに…………。
何度も申しますが、私は社さんが大好きです!!