立ち聞きの敦賀・覗きの社・通りすがりの奏江のおまけです。
…………調子に乗ってしまいました。




某大手芸能事務所、社長室


「殿、本日の敦賀様と最上様のご様子を収めたDVDでございます」

今日は戦国武将の気分ということで信長をイメージした姿の社長に合わせて、隠密の格好をした秘書からローリィはDVDを受け取った。


「最近、蓮の様子がおかしいと社から報告があったからな。そろそろ進展したか?」

なかなか進展しない二人に焦れながら、DVDを起動する。

「……おっ……おおっ!」

ラブミー部室の隠しカメラは全部で5台。色んな角度で撮影可能だ。
まるでドラマのようなカメラ割り、さすが俺の秘書だ。編集の技術まであるとはなかなかやるな。
画面の向こうでは蓮が最上君を抱きしめ唇を奪っている。
さすが我が事務所の看板俳優と若手実力派女優。まるでドラマでも見ているかのように絵になる二人だ。

(蓮!!無理矢理はダメだ!無理矢理はダメだぞ!!)

以前、撫でまわす位は許可したがそれも同意の上でのこと。

『……なんで……ですか?』
『社さんと、付き合っているの?いつから、好きなの?もう、恋なんてしないんじゃなかったの?……社さんが相手じゃ俺、かなわないよ!』

蓮の熱っぽい表情。完全な恋する男の顔だ。

『でも、いくら社さんでも譲れないんだ。君のことだけは……。ずっと、好きなんだ。後輩としてじゃなくて……俺は……君の恋人になりたい』

蓮!よく言ったぞ!!

『…………社さんとは、お付き合いしてません。これからも、することはありませんよ』

最上君が蓮の背中に腕をまわす。
蓮のあの表情を見たら、冗談やからかっているなんて思わないはずだ。
好きな人が他の相手と幸せになる様子を想像したことがあるであろう彼女なら気づくだろう。

『私は……敦賀さんが好き……です、から…………きゃあっ!!』
『ごめん。安心したら気が抜けて……。最近、眠れなかったから』
『あ、あの……私の膝でよかったらお貸ししますが……』
『……っっ!!お、お願い……します……』

「…………ぶふふぅーーーっ!!」

おいおい蓮、[抱かれたい男No.1]が好きな子に告白されて膝から崩れ落ちるって、放送禁止レベルだぞ!

(それにしても、二人の恋が結ばれてよかった)

画面の向こうには膝枕をしながら蓮の髪を梳く最上君とその手を握り瞳を閉じる蓮の姿がある。

「よし、そうと決まれば盛大な記者会見と成立記念パーティーを開かねば!!
…………おい、サンバ隊に至急召集をかけろ!」
「御意!!」

隠密になりきっている秘書を準備に向かわせ、俺はアメリカにいる蓮の両親へ報告の電話をかけることにした。




「…………社は子犬が好きなのか……ほほぅ……」

この呟きに、聞こえないはずの社に悪寒が走ったのは誰も気づいていない。




∞∞∞∞***∞∞∞∞

数日前に人生初のぎっくり腰になりまして、自宅での基本姿勢がうつ伏せ(症状が軽いので動きまわれます)な私の横で、昨夜息子(小6)が……
「お母さ~~ん!一緒にシェイクしようよ!Stand up!!」
と叫びながら腰を回していました。

(よし、社長がサンバ隊に召集をかける話にしよう)
と思いついて、今回のお話しが出来ました。