ども。
お久しゅうございます。
もう12月も中旬とはこれ如何に!?
嘘でしょ?
まだちょっと寒い秋だよねっ!?
現実逃避真っ最中です(*ノェノ)キャー
ではでは、前後編です。
〜〜〜☆〜淡緑色の使者〜☆〜〜〜
「蓮、はいこれ」
差し出されたのは一枚の紙。
仕事と仕事の合間にぽっかりと空いた、束の間の時間。
そんなエアーポケットな隙間を、疲労回復とパワーチャージの為に敏腕マネージャーは速やかに俺を事務所内にある想い人の元へと届けてくれた。
久々に顔を見ることが出来た最上さんは、いつもどおり丁寧なお辞儀と可愛らしい笑顔で俺を迎え入れてくれた。
「鳥…ですか?」
社さんから受け取ったのは、鳥を模った淡翠色の一枚の紙。
俺の掌から少しだけはみ出るその紙は、最上さんが持つと両手に納まるくらいだった。
そんな細くて小さな手のひらさえ、少し意識しただけで小さく鼓動が跳ねる。
確かにかわいらしい形の色紙だけど、どうしてそれを俺にくれたのか意図が分からないまま、その紙を裏返したりして観察した。
「社長が社内で配り歩いてるんだよ」
ーーー 鳥の形の紙に好きな人の名前を書いて持ち歩き、一週間後にその鳥に目を書くと、その人と両想いになれる。
「おまじないですか?」
「マリアちゃんの学校で流行ってるって聞いて、自分もやりたくなったんだって」
「あの人は…」
自らを愛の伝道師と称し、社内からはラブモンスターの愛称(?)で呼ばれる社長。
突然思いつくイベントごとには社員全員「またか」とは思っていても、もう慣れっこだった。
「こんなモノを持ち歩いて、もし落としたりしたら、大変なスキャンダルになっちゃいませんか?」
「まぁ、大丈夫じゃない?自分の名前を書く訳じゃないし、誰が書いたか分からなければ」
そんな最上さんと社さんのやり取りを頭の隅で聞きながら、視線と手の中の鳥に落とす。
「それで?蓮は誰の名前を書くんだ?」
しらじらしい程にしらじらしい態度で俺に問いかける社さん。
誰って…そんなの一人しかいない。
ずっと昔から、特別な女の子。
役者として自信を失いかけた時も、深い闇に引き摺られそうになった時も。
何時だって俺に大切なことを気づかせてくれる。
今の姿の俺も、本当の姿の俺も、その笑顔に何度心を救われたかわからない。
俺の未来に光をくれる存在。
願わくば、今度は俺が彼女の支えになりたい。
彼女の隣に当たり前のように立てる、そんな存在になりたい。
そう願う相手はただ一人。
「そうですね…社さんの名前とか…?」
「お前…俺を口説いてどうしたいんだよ…」
冗談で誤魔化しながらさり気なく最上さんに視線を向ける。
両手の上に乗せた鳥をじっと見つめている最上さんの表情は俯いていて見えないままで、彼女が今何を考えているのか読み取ることはできなかった。
おそらくは、不破との間に起こった過去のアレコレや、それに付随する諸々を思い出しているんだろう。
君の名前を書きたい。
そんな事を、恋も愛も全否定している彼女の前で言ったところで結果は見えているようなものだ。
良くて曲解。最悪、軽蔑の視線を送られておしまいなんじゃないだろうか。
「それで?本当は誰の名前を書くんだ?ん?お兄ちゃんに言ってみろよ〜」
「そうですねぇ…」
しつこく絡んでくる社さんをのらりくらりと躱していると、突然向かいに座っていた最上さんが勢いよく立ち上がった。
驚いて彼女を見上げる。
よく見ると、顔を真っ赤にして大きな瞳いっぱいに涙を溜めている。
白く細い指は力一杯握りしめられ、その小さな手のひらの中で鳥の形をした紙はクシャクシャになっていた。
「………………じゃないですか…」
「え?最上さん、どうしたの?」
よく聞き取れなくて、もう一度聞き返す。
様子のおかしい最上さんを前に、驚きを隠しながら極力穏やかな声でたずねた。
「っ…!だからっ!早くそこに『キョーコ』って書けばいいじゃないですかっ!!」
失礼しますっ!
最上さんは誰も全く予想していなかった言葉を叫んで、俺と社さんが呆然としている間に、乱暴にカバンを掴むと部室から飛び出して行ってしまった。
残されたのは閉まった扉を見つめたままの俺と社さんの二人。
「蓮、お前…。今、ものすっっごい告白されたんじゃないの…?」
社さんの言葉の意味を理解するのに数分。
「っ!!?」
真っ赤になって椅子から立ったり座ったりを繰り返す俺は、ひとり女子高生みたいにキャッキャと舞い上がる社さんを前に自分を繕うことすら出来なかった。