バレンタインなお話です。
松ちゃんです
蓮さんもキョーコちゃんも出ません( p_q)

 

 

 

 

o.oo.oo.oo.oo.oo.oo.o

 

上はきいろ

下はちゃいろ

三角形の小さな粒

 

 

 

 

物心つく前から、俺の隣にはいつもアイツがいた

兄弟でもない

親戚でもない

 

でもいつも隣にいた

 

 

アイツが母親の都合で俺の両親に預けられていたと理解したのは幼稚園の頃

迎えに来た誰かの母親たちが噂していた

 

「キョーコちゃんのお母さんは忙しい人でねぇ」

 

自分の母親に聞いたら、そう答えられた

 

「ショーちゃん、ショーちゃん」 

 

いつも満面の笑顔で俺の後を追いかけてくるアイツ

お気に入りの絵本は、どれも可哀想なお姫様を王子が迎えに来る話ばかり 

 

「ショーちゃんはキョーコの王子様なの」

 

真っ白な頬をピンクに染めながら言うアイツ

それは幼稚園を卒園して、小学生になっても中学生になっても変わらなかった

 

 

世間でいう「普通」の親子がどんなものか理解し始めたころ、アイツの母娘関係が「普通」とは違うと気づいた

 

今思えばアイツはアイツなりに必死だったんだ

なかなか会えない母親に少しでも好かれようと

他人の家に預けられた自分の立場を知っていた

嫌われないように

役に立てるように

期待に応えられるように

 

自分のためより他人のために生きることがあたりまえだと思っていた

そんなアイツを理解しなかった俺は、いつも誰かに依存する主体性のないアイツを疎ましく思っていた

 

「ショーちゃん、ハッピーバレンタイン!」

 

笑顔のアイツと大きな手作りチョコレート 

プリンを模した特大サイズのマポロ

 

俺のイメージじゃない大好物のプリン

アイツの前でだけは素直に味わえた

 

あんなに俺を見ていてくれたのに

俺はアイツ中の寂寥を見ようとしなかった

 

あの時アイツを手放さなかったら… 

 

気付いた時には遅かった

でもあの出来事がなければアイツの魅力に気づかなかった

皮肉なもんだな

 

俺と離れてからのアイツはどんどん輝いていった

 

部屋の奥、つけたままにしていたテレビから聞こえる耳慣れた声

 

 

今日アイツは一人の男の妻になった

 

自分の進む道を決め

自分のために生きて

自分を本当に愛してくれる存在に出会った

 

 

今朝届けられた箱を開ける

 

We will  be  happy

メッセージと共に現れたプリン味のマポロ

 

 

 

「ねぇショーちゃん、マポロが綺麗に剝がれたら良いことがあるんだって

 

幼いころキョーコと食べたチョコレート

 

 

ひとつ摘まんで口に放り込む

口の中で転がして…

 

綺麗に割れた三角形

 

「あま……苦…」

 

 

 

上はあまい

下はにがい 

懐かしい味

 

 

あまくてにがいひとつぶ

 




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