_____________________
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【ス・○・ビ非公式ファンサイト有志同盟からのお願い】
原作画像を掲載しているなど、原作への著しい権利侵害が見受けられるサイト様からのリンクは拒否させていただきます。
心当たりのある運営者様へ。この【お願い】文章を載せているサイト&ブログに関しての名称と作品名、そしてリンクの即時削除をお願いいたします。
(原作画の無断掲載、原作のただ読み&アニメや音声等の違法ダウンロードなど、原作側の利益を大きく損なう行為に加担するサイトへのリンクは拒否いたします。関連二次壊滅の危機を迎える前に対処してください)
_____________________
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
2017.5.6
一番下に追記あります。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
同級生×同級生
長い指が器用に動き、一本のネクタイが彼の首元で形の良いノットを作る。
その指先に見惚れて、自分のリボンを結ぶ手が止まってしまう。
「うまく結べない?」
くすっと揶揄うように笑って、ベッドに座る私に近づくと、私のリボンを結んでくれた。
数時間前に敦賀君自ら解いたリボンを、彼がまた結んでくれる。
「うん。可愛い」
敦賀君は、結びやすいように少し上顎を上げていた私の唇に、ちょんと唇を触れ合わせて微笑んだ。
少し前までの甘くて熱い余韻に少しぼうっとしたまま窓辺に視線を巡らせる。
「あ…これ、キレイ…」
敦賀くんの部屋の窓辺に飾られた碧く光る小さな石。
「気に入った?」
制服に身を包んだ敦賀君が優しく聞いた。
敦賀くんの許可を得て、その小石に触れる。
不思議に輝くそれを何度も陽に翳して、その輝きに夢中になった。
「最上さんにあげるよ」
「え…?」
隣に座った敦賀君を思わず振り返る。
「それ、魔法の石だから。きっと最上さんの不安や悲しい気持ちを全部吸い取ってくれるよ」
そう言った敦賀君が、なんだか少し遠く感じた。
☆
翌日。
夏休み前、最後の登校日。
昨日の敦賀君との出来事が頭の中を占領して、昨夜は全然寝付けなかった。
教室の前で立ち止まり、二の足を踏む。
普段の教室では敦賀くんと喋ることはほとんどない。
彼と裏庭で過ごしていることを知っているのは、友達のモー子さんと天宮さんだけだった。
教室の入り口を立ち塞ぐ私を、邪魔そうに避けながらクラスメイト達は中へと入っていく。
始業の時間が迫る中、意を決して教室に入った。
その日、敦賀君は学校を欠席した。
そして夏休み明けのホームルームで、私たちは担任の先生から敦賀くんが卒業を待たずに海外へ留学したことを聞いた。
結局、あの裏庭でキスを交わした日が、敦賀君と会った最後の日になった。
☆☆☆
混乱する頭を落ち着かせようと、同窓会会場を出て化粧室に向かう途中、背後から声を掛けられた。
「最上さん、久しぶり」
「敦賀君…」
どうしていいかわからずその場に立ちすくんだ私の元へ、敦賀くんが向かってきた。
あわてて逃げようにも、彼の長い脚ではほんの数歩で追いつかれてしまう。
「あれ?敦賀君こっちに行かなかった?」
「どこ行ったんだろう?もっとお話ししたかったのにぃ」
会場の出入り口から敦賀くんを探す女の子たちの声が聞こえた。
既婚者とわかっても、やっぱり敦賀君は人気なんだ。
私なんかが一緒に居るところを見られては大変と、その場を離れようとしたら、大きな手に腕を引かれた。
「ちょっ…」
「ごめんっこっち…」
腕を掴まれたまま、階段の踊り場まで引っ張られる。
長い腕が背中と腰に回り、大きな胸に包まれた。
あの頃とは違う爽やかなマリンの香水が、離れた時間と私たちの距離を強調した。
暫くして足音が去り、安堵した敦賀君の腕が緩んだタイミングで彼から距離をとった。
「ひ、久ぶりっ。敦賀君も来てたんだね」
慌てるあまり白々しい挨拶をしてしまった。
「うん。最上さんに会いたくて」
「っ!?」
そう言って私に向かって伸ばしてきた敦賀君の指で光るそれ。
「何言って…だって敦賀君は…」
敦賀君はぎゅっと胸元できつく握りしめた私の手を取り、解いたその上に指輪を乗せた。
「これ見て」
「っ!?」
「フェイクだよ。結婚なんてしてない。
君とゆっくり話しがしたくて、こうすればあまり人も寄り付かないって言われて…」
掌の上で輝く、シームレスなその指輪の中心に嵌っていた石には見覚えがあった。
「この石…」
「同じものを君も、持っていてくれているよね?」
「それはっ…」
12年も経っているのに未練がましい。
そう思いながらも決して手放すことができなかった。
ショータローの取り巻き達からの心ない嫌がらせを受けた時も。
母との行き違いに涙した時も。
それだけじゃない。
受験や就職、一人暮らしをはじめた時。
いつも私の心の支えになってくれたのは、あの時敦賀君からもらった不思議に輝く石と敦賀君の言葉。
そして何より、彼との繋がりが夢ではなかったと信じられる唯一の証。
前触れも何もなく姿を消した敦賀君を、憎く思わなかったわけじゃない。
それでも、彼がくれたあの石と、裏庭での時間と言葉が私を救ってくれたのは確かで。
「黙っていなくなってごめん」
掌の指輪を私の手ごと包みこみ、そのまま両手で握り締めた。
「あの日、本当は言うつもりだったんだ」
苦しそうにそう呟いた敦賀君。
震えているのは私の手なのか敦賀君の手なのか…
「勝手だけど…思い出作りのつもりだった。
高校に入ってからずっと君を見ていて、やっと君に近づけた時には、俺は日本を離れる直前で…。自分勝手な考えだったよ。その結果、君を傷つけた…」
「敦賀君…」
敦賀君は大きく深呼吸して、私の目をまっすぐに見つめた。
「ずっと謝りたかった。それで、今更だけど…もう一度俺と…」
「…ずるい」
拗らせた12年は決して短い時間じゃないのに。
「もう一度、君の隣にいるチャンスをください」
敦賀君の掠れるような、自信のなさそうな声。
縋るような瞳。
私の手を包む暖かくて大きな…震える手。
「もう、黙っていなくならないで」
敦賀君を見上げて、ずっと言いたかった文句を言った。
「約束する」
敦賀君は見たこともないくらい綺麗な笑顔でそう言って、もう一度あ大きな胸の中に私を閉じ込めた。