非正規 | h

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呼び出しを食らったときに、やっと、気づいた。

私は非正規雇用の人だった。

正社員ではなかった。フルタイムの非正規。

 

「今度の社員旅行は社員だけで行くから」

と言われたとき。

参加の可否を尋ねられるのだと、最初は思った。

行き先は外国。パスポート切れてる。

早いうち手続き行かないと。

など考えながら話を聞くうち

社員旅行のメンバーに私は含まれてない

ということに気づいた。

それで、私は社員じゃないんだと理解した。

 

昨年の三月末。

アルバイトとして働き三ヶ月が経った日。

「4月1日付けで正社員として」と上司に言われた。

間違いなく。"正社員"と言われた。了承した。

給料等の話がなかった。変だなとは思った。

4月の給料も変わらず時給制だった。

金額も上がってない。一年経っても同じ。

 

時給1000円の正社員っていうのも

無くは無いことなのかも知れないと考えた。

時給制だから祝日あると月収減るわ

待遇はアルバイト・パートと変わらないわ

とはいえフルタイムで働いてるし

名ばかりでも、立場上は、"正社員"。

そう信じていたことが恥ずかしい。

 

私は正社員として働いている。

と親や友達に言っていた。義母にもだ。

正社員の仕事につけて良かったね

とみんな言ってくれていた。

みんなに"正社員"と言っていたのが恥ずかしい。

ずっと非正規だった。私が知らなかっただけ。

私が阿呆だっただけ。

 

「正社員として」という言葉があったから

私は"正社員として"働いていると思ってた。

正社員でありながら安い時給制のままとか

普通に考えたら非常におかしな話。

正社員って口では言われたものの

その実、非正規 ってすぐ気づきそうなもの。

 

たぶん、私自身が認めたくなかったんだな。

私は"非正規"で、社員じゃないっていうことを。

アルバイト・パートと同じ待遇でも"正社員"なんだ

って自分が思いたかったんだ。

 

私はこの会社の社員ではない。

それはただ、認識が変わっただけのこと。

ずっと時給だったし、何も変わらない。

しかし意欲は大きく変わった。

やる気なくした。

雇用条件が悪くなったわけでもないのにさ。

社員じゃないんだって意識になったら

やる気なくした。

私は非正規。社員の皆とは違う。

明確な差がつけられているのだから

社員と同じように頑張る気なんてないし

何の責任も負いたくない。

やる気なくした。

 

 

非正規労働の向かう先 [ 鴨桃代 ]