ジェジュンのMVがゴシック・ロックの世界だと聞いて、ゴシックって今までなじみがなかったので、少しでもゴシックを理解するヒントになればと『ゴシックハート』という本を読んでみました。


ネットで適当に検索して出てきた本を適当に買ったので、内容はゴシックロックとは全くかけ離れた内容でしたけれど…。


江戸川乱歩とか三島由紀夫とか谷崎潤一郎とか…。


ほんとは、MVに出てきたカラスとかフクロウとかの意味が知りたかったんです。


でも、自分で調べる前に、ジェジュンがインタビューで話してくれてました。


最初MVを見たとき、いろいろ「?」と思ったことがあって、ファンの皆さんに叱られるかもしれないけれど、どうでもいいことがいろいろ気になってしまったんです。


「カラスの意味って?」「フクロウの意味って?」「オオカミ(ほんとは犬だったみたいだけど)はなんであんなに何度も吠えてるの?」「蛇の意味って?」「蛇まで口を大きく開けてるのはなぜ?」「頭のてっぺんがとんがってるマスクはいったい何?」「なんでここで髑髏?」「仮面の意味は何?」「あんなに両手に力を籠めてやり遂げたことが『火をつける』ことでいいの?ハリーポッターなら杖の一振りで終わってるんじゃ…」「『炎』に何か特別な意味があるのかな?」「翼は生えたけど翼使わないで空に浮いたし…翼意味なくない?」「目が光ったり牙生えたり翼生えたり…あれって結局何に変身したの?」


と、次々疑問が浮かんでしまいました。


ゴシックの世界って今までよく知らなかったので、すべてがわからないってかんじでした。


これらが象徴しているものが何なのかは全部わかったわけじゃないけど、本を読んで、ゴシックってどういう価値観なのか、少しわかってきて、髑髏とか仮面とか翼とか吸血鬼とか、そういう小道具が果たす意味というか効果が少しわかるような気がしました。


『ゴシックハート』は、こんな文から始まります。


「これから私はゴシックな意識について語ろうと思う。ゴシック建築、ゴシック・ロマンス、ゴシック・ロックから現在の『ゴス』まで、いくつかの飛躍と変質はありながらも一貫した世界を作り上げてきたのが「ゴシック」という名の感受性だ。それは主義ではない。また思想や理論として構築されているのでもない。言ってみれば好悪の体系のようなものだ。しかし自己の必然にもとづいた命懸けの好みなのだと言いたい。ロックがそうであるように、それは生き方なのだ。」


そして、ゴシックの精神について、次のように説明しています。


「色ならば黒。時間なら夜か夕暮れ。場所は文字どおりゴシック建築の中か、それに準ずるような荒涼感と薄暗さを持つ廃墟や古い建築物のあるところ。現代より過去。ヨーロッパの中世。古めかしい装い。温かみより冷たさ。怪物・異形・異端・悪・苦痛・死の表現。損なわれたものや損なわれた身体。身体の改変・変容。物語として描かれる場合には暴力と惨劇。怪奇と恐怖。猟奇的なもの。あるいは一転して無垢なものへの憧憬。その表現としての人形。少女趣味。様式美の尊重。両性具有、天使、悪魔など、西洋由来の神秘的イメージ。驚異。崇高さへの傾倒。終末観。装飾的・儀式的・呪術的なしぐさや振る舞い。夢と幻想への耽溺。別世界の夢想。アンチ・キリスト。アンチ・ヒューマン。

 こうした要素によってゴシックの精神は構成される。すべて決まっているというのではないが、基本になる表象・意匠・道具立てなどは相当歴史的にできあがっている」


「ゴシックはこの種の進歩主義を強く敵視する。勢い、大抵の流行にも懐疑の視線を向ける。明るさや若さや愛ばかり望む風俗には反発する。

 だから、明日は今日より幸せであるとか、人間精神は改良できるとか、人は平等であるとか、努力すれば必ず報われるといった言葉を信じられなくなったとき、すなわち近代的民主的価値観が力を失ったとき、ゴシックはその魅力を発揮する。たとえば貧富の差が拡大し、富む奴は常に富み続け、貧しい者はそこから抜け出す術がない、不合理不条理な制度が全く改まらない、社会的階級がはっきりし、立場のよい者が好き放題に弱者を苛み、やられる奴はやられっぱなし、しかもそれを変更する手段がない、そのため憎悪と軽蔑が剥き出しになり、よりひどい偏見が拡大し、排他的な民族主義や帝国主義が自らを正義と主張し続け、そこから発する暴力を多数が支持している2004年現在だ。

 こういう場で単純に明るい未来と人類の善性を信じられる人がどれだけいるだろう。現実制度の多くが優位者のためのものであることは既に見透かされている。

 そして実のところ、現実社会という『誰かのための制度』を憎み、飽くまでも孤立したまま偏奇な個であろうとするゴシックは、そういうクズな世界での抵抗のひとつなのである。」


この後、「ゴシックの精神」「人外」「怪奇と恐怖」「様式美」「残酷」「身体」「猟奇」「異形」「両性具有」「人形」「廃墟と終末」「幻想」という筋立てでゴシックの心が説明されていきます。


私は、「飽くまでも孤立したまま編奇な個であろうとするゴシック」という表現に、ゴシックの底辺を流れる精神が表されているのではないかと感じました。


ジェジュンのMVは、ジェジュンがゴシック・ロックの世界を望んだのではなく、曲からイメージしてジェジュンが書いた詞を元に、他の人が組み立てた内容だと、ジェジュンのインタビューからわかりました。


MVを制作した人は、きっと、ジェジュンの詞から「孤立したまま編奇な個であろう」とする精神を読み取ったのではないか、と思いました。


ジェジュンの語る言葉から伝わってくるものは、いつでも「調和」であり「優しさ」だけれど、その奥に秘められている強い「個」の主張を、感じ取ったのではないかなと。


そこに、ゴシックの精神と通じるものを感じてああいうMVになったのではないかなと、勝手に思いました。


ジェジュンがインタビューで語る言葉は、とても柔らかくて調和に満ちていてユーモアがあり、いつでも周りの人を楽しませてくれます。


人前ではできるだけ笑顔で、人の心を幸せにできるように…ジェジュンの周りはいつも笑いと優しさに満ち溢れているように見えます。


でも、その心の中には、誰にも曲げられない、何にも染まらない、強い「個」があり、それを「歌」という作品で表現することができる。


自分の経験した辛さも悲しさも、世の中に対する抵抗も主張も、愚痴や泣き言にするのではなく、じっと心の中に溜めて一つの作品に作り上げていく。


ジェジュンの心を通して作り直され、表現されて目の前に提示される世界が、私はすごく好きです。


ジェジュンの「表現する才能」に惹かれるし、ジェジュンにしか作れない世界が大好きです。


これからジェジュンの歌う歌が、どういうジャンルのどういう歌になっていくかわからないけれど、どういう表現方法をとったとしても、ジェジュンの持つ世界、ジェジュンの表現する心が好きだから、ジェジュンの心を通して出てくるものはたぶん全部好きだと思います。