どーもです。

このお話は、2016年12月~2017年4月で連載していた話です。

なぜこんなに間延びしたのかというと、ただ単に、ぽてとは終焉あたりになると萌えが減って、書けなくなるんです。ついでに言うと、他のお話の方が書いていて楽しかった。でも、さすがにこのままでは店は閉めれないので、続きを絞り出しました(; ̄ー ̄A





色々と色々と色々と!好き勝手書いています。(いつもですけどね〰)、パッとサラッと読み流していただきたい!!






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熱い腕の中に抱き込まれて、吐息を含んだ、胸が締め付けられるような声音で懇願される。

隠し事を聞いてほしい、と。

本当のことを知ってほしい、と。

君には全部話したいのだ、と。



私が、そんな敦賀さんに抗えるわけはなく。だから私は、「はい、教えてください……………全部。」と答えて。

そうしてラグに腰をおろした私をみとめると、敦賀さんは「じゃあ聞いていて……………」と、目線を落としたまま話しはじめた。



「俺の本名は『敦賀 蓮』でもなければ、戸籍も…日本籍じゃない。」

「……はい。それは……なんと……なく。」

「…………………うん………で、君の言う、ダークムーンごっこの時に俺が好きになった人は、君ではない別の人だってことなんだけど、やっぱり……君なんだよ。なぜなら、気持ちのスタートが違うんだ、俺達は。」

「スタート…?」

「そう。最上さんと俺とは、12年前に会っているんだ。」

「12年……………まえ……?」

「うん、京都でね。」

きょ、うと…………?

まさかまさかまさかまさか。

有り得ないと思うのに、絶対に有り得ないと思うのに、なのに。

なのに。

朝日に満たされた軽井沢の河原で、敦賀さんをコーンと見間違えた、あの情景が、強く、自らの存在を主張して。

だから、私は……………、





そんな驚愕の予想に固まった私の前で、敦賀さんはおもむろに立ち上がり、そしてすぐに帰ってきた。手にはコンタクトレンズケース。

「見てて。」

敦賀さんは、慣れた手つきで黒色のカラコンを外した。そしてこちらを見た敦賀さんの瞳は、もう間違いようもない、コーンの瞳。ミスティックグリーン…だ…………。

「髪は、黒色に染めてる。……………ごめん、キョーコちゃん。俺、妖精じゃなくて、普通の人間なんだ。」

「………………こぉ……………ん…………………………なの、」

「うん、ごめん。混乱するよね。ごめん。キョーコちゃんにとって、コーンのことは大切な想い出だったろうに、蓋を開ければこんな卑怯な男で、ごめん。」


混乱。


うん、混乱してる。敦賀さんは何を言ってるんだろう。私は何を知らされるのだろう。混乱してる。でも、卑怯ということだけは違うと、なんとか伝えたくて、首を横に振った。だって敦賀さん、本当に辛そうで。苦痛と戦っているのがありありと見えて。敦賀さんが、私を馬鹿にしてるとか、そんなことじゃないのだけはわかるから。

だから、そんな辛そうに自分を卑怯だなんて言わないで。

そう思って、首をしっかりと横に振った。

でも敦賀さんは、相変わらず悲痛な面持ちで、深くため息を吐く。

「しかも卑怯なだけじゃないんだ。俺は、罪を抱えてる。」

「……………罪?」

「うん。……………俺は……俺はね…とても恵まれた環境に生まれた。色々なものを人よりもたくさん持っていたんだよ。だから周囲から妬まれ、嫉まれた。悪意をとめどもなくぶつけられて…。それがとても辛かった時、日本で君に会ったんだ。君は、くすぶっていた俺に、演じる楽しさを思い出させてくれた。それに、とても可愛いらしい君に、俺は癒されたんだ。俺にとっても、大切な大切な出来事だった。…………でも、そのあと帰国して…………やっぱり状況は好転しなかった。俺は……………自分を呪われた存在だと思い込み、差しのべてくれる手もとらずに卑屈になって、自分自身に負けて……結果…………………………闇に堕ちた。」

さらにどんどん辛そうに歪む敦賀さんの顔。

「そして……そして、そんな俺のせいで、一人の人間の命が失われた………!」

敦賀さんの声は悲痛そのものだった。

「……………彼のことは意図的じゃなかった…………!でも、間違いなく彼の死は俺のせいだ。許されることじゃない。いっそこのまま俺も……と思った。俺なんて消えてしまえばいいんだって………!」


敦賀さん……………!

私はたまらなくなって、敦賀さんのもとに膝立ちで寄ると、固く握られた敦賀さんの拳を、私を手のひらでそっと覆った。

ハッとした敦賀さんは、軽く頷いて、大きく息を吐き出す。

「……………ありがと……………キョーコちゃん……………大丈夫……………。キョーコちゃんが聞いてくれているから……………大丈夫……………」

「……………うん、私は、ここにいるから。」
迷子の子供みたいな雰囲気と、年相応の口調、そしてコーンの碧の瞳で見上げてくるから、うっかりタメ口が出てきてしまう。

「……………それで……………ただ立ちすくむだけで、ただ息をしているだけの俺は、生きているのか死んでいるのか曖昧で………。そんな時、ボスが……宝田社長が、俺が生きていく道を示してくれたんだ。日本にとび、完全に別人として俳優を続けていく道を……………。」

「…………………………そ、れが『敦賀蓮』……………。」

「……………うん、そう。俺は、来日してからは、日本人として生きていくために必死で勉強した。それに、別人になったからといっても、犯した罪は消えない。…………だから、演技をさせてもらえることに感謝して、贖罪のためだけに生きていこうと、俺にはそれしか許されていないと、そう思ってたんだ。」

ああ……………、あのとても悲しそうな顔は……そういう……………。

「俺は、アメリカに全てを置いてきたつもりだった。過去は振り返らないと……。でも、頭ではそう思ってはいても、6歳のキョーコちゃんとの思い出は大切で………。そしてね、キョーコちゃんの本質を知っていたから…………。がんばり屋さんで、人のために一生懸命になって……それにメルヘン大好きなびっくり箱みたいな女の子……………。俺は、成長した君にもすぐに惹かれはじめた。はじめのうちは、俺は大切な存在は作れないんだと自分の恋心に抗ってみたんだけどね。ダメだったよ。どうしようもなく深みにはまっていったんだ。……………だから、鶏君に相談した16歳の女の子は、紛れもない、最上キョーコちゃん、君のことなんだよ。」

「………………………………う、ん…………」

「トラジックマーカーの撮影でグアムに行った時……………キョーコちゃんが、俺の呪いを…………俺のしがらみを解いてくれたでしょ…?あの時に決めたんだ。俺の犯した罪は消えない。でも、だからといって、この気持ちを押さえつけることはやめようって。キョーコちゃんという光を、キョーコちゃんという『幸せの象徴』を、求めてしまう心を認めようって。」

「…………………………」

「そう、決めたんだ……………キョーコちゃんを、堂々と愛そうって……………。」

「…っ!!!!!」
カッと全身が熱くなる。

「ずーっと、キョーコちゃんだけ、見てた。キョーコちゃんのそばで、キョーコちゃんの様子をうかがってたよ。いつか、キョーコちゃんの心の傷が癒えて、誰かに心を開きたいと思った時に、一番近くにいられたらって。いつか俺のことを男として見てもらえるように、頑張ろうって……………。」

「……………そ、んな、そんな……………」
敦賀さんの顔に血の気が少し戻ってきた。今度は、その真っ直ぐな視線を私に注いでくる。

こ、これは…………いたたまれない、いたたまれないっ!!


どうしようどうしよう!ほんと、に?ほんとに……あんなに前から私のことを?


「俺の気持ち……………伝わった?信じてくれる?」

私はパニックなままだけど、とても一生懸命な様子のコーンに、反射的にこくこくっと頷いた。

「あと………ね……、俺の気持ちを信じる信じないもだけど……………こんな詐欺師な俺を……………許してくれる?」

コーンは、自信無さげに、でも、気持ちのこもった目線でなおも見上げてくる。

今度は反射的ではなく、ちゃんと意志を持ってこくこくっと頷いて……………、そして、なんとか言葉を探した。

「コーンが、辛かったの……………わかったから。私……………経験がないから全部をわかってはあげられないけれど…………でも、色々な悪意と……喪失感に押し潰されて、そこにいられなくなって………自分が生まれた国を離れて、一人きりで日本に来て……………日本人として、生きて……………大変だったのは……………わかる。うん、コーン………大変だったよね。わかるから、」

「キョーコちゃん…………」

「コーン、頑張ったね……………」

「キョーコ、ちゃん………っ」
コーンは、私の胸元にしがみついてきた。

「……………っ!?」
びっくり、した。けれど、コーンのしがみついてくるその腕の強さに、ハッと気づく。これは、受け止めるべきものだ、と。

「………………………………………………………………………………コーン…………………………えらかったね、辛かった…………………………頑張ったね………」

私は、コーンをぎゅっと抱き締めた。私が辛いとき、泣きたいときに、敦賀さんが抱き締めてくれて。とても安心したこと、嬉しかったことを思い出したから。だから、コーンもこうやって抱き締められたら、少しは気持ちが落ち着くかなって、一人きりで泣くよりは、救われるのかなと思って。私の腕ではコーンの体は包み込めなかったけれど、私の体のできるだけでコーンを覆った。


しばらく背中を撫でていると、私の腕の中で身動ぎしたコーン。
「キョーコ、ちゃん……………」

「……………ん、なあに?」

「ありがとう……………あと……………さ、」

「………………ん?」

「……………えと、で、結局、昨日は……………なんだったの…?」

「……………へっ、」

「……………昨日……………の、キョーコちゃんはなんであんなに可愛いことを言ってくれたのかなって……やっぱりいくら考えても……どうしてもわからなくて…」

私の胸元に顔を埋めたまま、コーンは、もぞもぞと聞いてきた。

「キョーコちゃんのああいうの、俺的には願ったり叶ったりなんだけど、でも、普通におかしいかなって……………わけを……………聞いてもいい?」

「…………………………、」

「俺に言えないこと……?鶏君のことは教えてくれたのに、それでも言えないような、なにか…もっと重大なことなの…………?」

「ええっと……………」
コーンの言いたいことはわかる。確かに昨日の私の言動は、「変」だと思うに決まっている。当たり前だ。昨日は最上キョーコとしてではなく、『敦賀さんが大好きなキョーコちゃん』のつもりでいたのだから。だから、……………でも、なんて説明したらいいのか。……椿姫様のことは、コーンは知らないわけで……………って、当たり前だけど……………。

「キョーコ、ちゃん。」

「うあっ、ははははいっ、」

コーンが、私の胸元から少しだけ顔を出して、上目遣いに見上げている。

(か、かわっかわっかわっかわっ可愛いぃぃぃぃ〰〰〰っっ!)

「こぉ、ん……………」

「キョーコちゃん?」

「〰〰〰〰〰っっ!……(ま、負けたっっ)…………………………………じゃ、じゃあ……………話すから…………………………で、でも、でも、笑わないで聞いてね…………、」

私は、コーンに椿姫様のことを話そうと思った。だって、コーンは話してくれた。私がコーンの気持ちを信じられるように、頑張って辛いことを話してくれた。今度は私がコーンを信じて、私が話す番だ……………!

「信じられないかもしれないけど、ほんとのことなの……………」

そう言って、私は椿姫様が夢に出てきた一昨日の夜のこと、私のおそれおおい願いを話しはじめ。そしてコーンは、のそのそと私の体から離れて、すぐそばに正座をして聞いてくれた。




「……………と、いうわけなの、」
と、私が話を終えたところで、

「…………………………うそ、だろ……………」
とコーンの呟きが聞こえた。

(えっ、椿姫様のこと、信じてもらえなかった!?)そう思って、バッと顔を上げると、そこには片手で口元を覆った、真っ赤な顔のコーンがアセアセと焦っていた。

「そんな……………嘘だろ…………、…キョーコちゃんが、そんなに前から、俺のことをそんなふうに想ってくれてたなんて……………」

「…………………………あ、(ああ……………、そっち……………)…………………………えとっ、椿姫様のことは、信じてくれるの?」

「えっ、ああ、……だってそりゃあ、さっきも大社で話したけど、そういう人外の力は間違いなく働いてるでしょ……………。キョーコちゃん、メルヘン力が半端ないし、『何か』を引きつけてもなんだか違和感無いというか……………」

「ぅ、ん……………め、めるへん、ね……………」

「…………………………でも…………ね、だから…全部本当なんだよね……………?」
おそるおそる聞いてくるコーンがそりゃあ可愛くて。椿姫様のことを信じてくれたことが、私の話を信じてくれたことが嬉しくて。

「全部本当だよっ」
敦賀さんへの恋心を告白したことが恥ずかしかったけれど、誤魔化さずにちゃんと答えた。

「やったぁ〰っっ!」
コーンは、またがばりと抱きついてきて。

「キャッ、ちょっ、コーン、苦しっ、」

「コーンじゃないよ、キョーコちゃん。………クオンなんだ…」

「……………へぃ?」

そのあと、コーン………いえ、久遠は、その本名と素性を明かした。

その事実に、私はもうキャパオーバーながらも、一生懸命に話してくれた久遠を責める気持ちにもなれず、「へ、へ〰……………、そーなの、へ〰……………」と返すしかなかった。

久遠は、「全部聞いてくれてありがとう。これで隠し事は無いです。ずっと騙していてごめんなさい。」と神妙な顔つきで言ったあと、「………キョーコ、大好き。……………愛してる。」と神々しさMAXで言いはなったのだ。

結果的に、私は、久遠から放たれたあまりのハイビームに浄化されてしまい、悶絶気絶したことは言うまでもない。













《……………コ、…………………………キョー……………キョーコ、》

(……………………………………ん、……………)

《キョーコ、》

(………ぁ…………………その、声は……………椿姫様…………?)

《……………ふ、…………いかにも。わらわは、そなたに『椿姫』と呼称されておる者だ。》

(…………………………ぇぇと、……………なんだか、感じが…………………………)

《………うむ、こうしてそなたの精神に働きかけるのもこれが最後だからな。わらわも偽らざる立場で話そうと思うた。》

(……………は、はあ……………)

《……………手の火傷は………もうよいな、全て治してしまおう。あの男を謀る必要も無くなったしな。そなたも、その手では不便であろう?》

(は、はぇ……………)

《今回はな、そなたとのやり取りも最後だから……詫びを入れたい。》

(わ、わび?っえ、謝られるようなことなんてっ、なにも……………)

《そなたにな、『お花の魔法』と言ったが…………実際は、魔法などではないのだ。そなたが、わらわの庭に咲く椿の花をな、美しいと褒めてくれたから……………魔法と言えば、受け入れやすいかと……………》

(…………………………そ、うなんですか…………………………)

《それに……………そなたの思考はわかりやすかった。よって、そなたの好くもの…魔法と……………。謀ってすまなかった。がっかりさせたな。》

(ああっ!いえっいえっ!とんでもないっ!そんなことはっ、そんなことはなく、もう十分でしてっ!!)

《ふふ、そうか。忝ない。……………それから………老婆心でひと言だけ……。あの男は、そなたと想いが通じ合う前から、我々神に逆らってでも、そなたを手に入れたいと望んでいた。…そなたが…狂おしい程に、愛しくて愛しくてしかたないのじゃ。》

(ふ、ふえぇっ、)

《………おそらくは、易くはない人生を背負ったあの男と共にあれば、苦難もあろうが…しかしそなたへの愛の深さはこの上ないもの……。………よかったな………あの男に大切に愛してもうのじゃぞ。》

(〰〰〰〰っ!)

《………さあ、目覚めの刻じゃ。本来わらわは、そなた方、人の世への干渉は許されぬが……………二人のあまりの想いの強さにわらわも惹かれてもうた。だが、戯れの時間は終わりじゃ。》

(…………………………あ、あっ、りがとうございましたっ、)

《ふ、いや………。……わらわも久しぶりに楽しませてもろうた。………そなたの願いは、そなたの存在であの男を幸せにしてあげること…だったな…。……さあ、あの男を存分に幸福で満たすがよい……。…あの男へのそなたの気持ちを、きちんと言葉にするのだよ………。》


(ありがとうっ、ございました………っっ)

夢の中で、精一杯の声で叫んだ。










目覚めると、敦賀さん、コーン、もとい久遠が、心配そうな、でもとても嬉しそうな顔で私をのぞきこんでいて。それはもう、また驚いてしまったけれど。でも私の耳に、《さあ、キョーコ……言葉に………》としっかりと声が甦って。だから私は、恥ずかしいけれど頑張ることにした。



「敦賀…さんっ、コーン、久遠…………っっ、貴方のことが、大大っ、大好きです……………っ!!」

私のその言葉に、久遠は面食らったあと、それはそれは真っ赤になってふにゃにゃ〰っと笑った。




その笑顔を見て、私の、『敦賀さんを私の存在で幸せにしたい』という願いは、本当に叶ったのだ、と思った。

だから、私も、幸せで幸せで。



跡形もなく完全に火傷の治った手を、確かめるようにギュッと握り合わせる。当たり前のように痛みがない。


椿姫様は、そうではないとおっしゃったけれど………私にとってはやっぱり魔法だったと思う。そう、とっても素敵な『お花の魔法』。

だってこんなにも、心も体も、ほわりとあたたかい。